所得税の最高税率はかつて「70%」もあった! 今の最高税率・最低税率は何%?
配信日: 2023.01.08
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
所得税は最高で税率70%の時代があった
若い世代では知らない方も多いかと思いますが、日本の所得税の税率は過去に最高で70%(課税所得8000万円超の部分)となっていた時代があります。昭和61年(1986年)分の所得税の税率は、最低10.5%から最高70%までの15段階でした。
図表1
出典:財務省 「税率・税負担等に関する資料」
その後、サラリーマン世帯の負担軽減を図る目的から平成6年(1994年)には最高税率が70%から50%に、平成18年(2006年)には37%にまで引き下げられました。しかし、所得の再分配機能の回復を目的として、平成27年(2015年)には最高税率が現在の45%となりました。
令和4年(2022年)現在は最低税率が5%、最高税率が45%で、課税所得の金額によって7段階の税率が適用されるようになっています。こうした推移を見ていると、今後も社会情勢などに応じて所得税の税率は変化していくことが想定されます。
現行の最低税率と最高税率、どれくらいの収入の方が該当する?
現行の最低税率と最高税率には、どれくらいの収入のある方が該当するのでしょうか。夫がサラリーマンで、専業主婦の妻、特定扶養親族に該当する子が1人、一般扶養親族に該当する子が1人いる世帯を例に、所得税の税率について見ていきましょう。
図表2
出典:財務省 「税率・税負担等に関する資料」
上記の場合、夫の課税所得が195万円未満(年収でおおむね655万円未満)であれば最低税率の5%が適用されます。また、最大税率となる45%が適用されるのは、課税所得で4000万円以上(年収ではおおむね4473万円以上)になります。
なお、家族構成など個別の条件次第では同じ年収でも課税所得が異なり、税率も変わることがあります。
住民税の税率は?
所得税と同じくらい身近な税金に住民税(個人住民税)があります。現在、住民税の税率は一律10%に設定されていますが、こちらも所得税のように税率は変化してきました。
昭和62年度(1987年)分は、所得に応じて最低4.5%から最高18%までの14段階でしたが、平成6年度(1994年)分からは5%から15%の間で3段階に、また平成18年度(2006年)分からは最高税率が13%になりました。その後、平成27年度(2015年)分からは所得に関係なく現行の一律10%となっています。
図表3
出典:財務省 「税率・税負担等に関する資料」
過去の推移を見ても、住民税は所得税ほど税率が高くなく、変化の幅は小さいものですが、時代とともに変化があります。
日本の所得税の税率は諸外国と比べてどうなっている?
日本の所得税の税率は、諸外国と比較してどうなっているのでしょうか。所得税単体で見た場合、英国やドイツ、フランスと比べて同程度の税率となっています。
図表4
出典:財務省 「税率・税負担等に関する資料」
住民税を含めても他国と同じような税率となっており、異常に高い、または低いというわけではなさそうです。ただし、上記はあくまでも個人所得課税の税率の構造を比較したもの(イメージ)で、総合的な税負担などとは異なります。
まとめ
日本の所得税の税率は現在、課税所得に応じて5%から最高で45%です。過去に最高税率が最も高かった70%の頃と比べると、高所得者の負担は小さくなっています。
会社員でも自営業などでも、所得税は無視できない存在です。税に関する知識と理解を深めていくためにも、まずは所得税の税率について知り、自分がどれくらい所得税を納めているのか確認してみてはいかがでしょうか。
出典
財務省 税率・税負担等に関する資料
執筆者:柘植輝
行政書士