更新日: 2023.02.23 確定申告

家賃収入のある年金生活者は確定申告しなくてはならない?

執筆者 : 林智慮

家賃収入のある年金生活者は確定申告しなくてはならない?
年金を受け取っている人のなかには、家賃収入を得ている人もいらっしゃるでしょう。このような場合、必ず確定申告をしなければならないのでしょうか。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

所得税の確定申告をしなくてもよい場合とは

年金生活者の場合、一定の要件に該当すれば確定申告は不要とされています。
それは、
 

(1)公的年金等の収入額の合計額が400万円以下
に該当する方が、
(2)公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が、20万円以下
に該当する場合です。
(引用:国税庁「年金受給者の皆様へ 所得税の確定申告が不要になる場合があります!!」)

 
ここで、(1)は「収入金額」で、(2)については「所得金額」で判断することにご注意ください。公的年金等は雑所得に分類されます。公的年金等以外の雑所得とその他の所得(事業・不動産・配当・給与・総合譲渡と一時)の所得金額の合計が20万円以下であれば申告が不要になるのです。
 
公的年金を受け取るときに源泉徴収されています。もし、年金以外の収入があって、申告すると納税になる場合でも、年金以外の所得が20万円以下であれば申告しなくてもよいのです。
 
そのため、家賃収入がある年金生活者でも、確定申告が必要であったり、不要であったりするのです。
 

家賃収入は不動産所得

では、家賃収入はどの所得に分類されるのでしょうか。家賃収入は不動産所得に分類されます。
 

(1) 土地や建物などの不動産の貸付け
(2) 地上権など不動産の上に存在する権利の設定および貸付け
(3) 船舶や航空機の貸付け

についての所得を不動産所得といいます。
(国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」より引用)

 
家賃収入は(1)土地や建物などの不動産の貸付けに該当するので、不動産所得に分類されます(ただし、事業所得、譲渡所得に該当するものは除きます)。
 
不動産所得の金額は、「総収入金額-必要経費」で計算します。ここで、賃貸料以外の、名義書換料・承諾料、更新料または頭金など、敷金や保証金(返還の必要がないもの)など、共益費(電気代、水道代や掃除代)などの名目で受け取る代金も、総収入金額に含みます。
 
必要経費は、その不動産収入を得るために直接必要な費用や、その年に生じた業務上の費用です。例えば、固定資産税、損害保険、減価償却費、修繕費等があります。借り入れをして物件を購入した場合、負債の利子額は経費にできます。
 
建物は、時間がたつとともにその価値は下がっていきます。このような資産のことを減価償却資産といいます。消耗品などは費用が発生したときに経費にされますが、減価償却資産は、資産を取得した金額が取得時に全額費用になるのではなく、資産による耐用年数により取得費用に償却率を掛けて一年分の必要経費を算出します(建物は定額法を用いる)。この算出されたものが減価償却費です。
 
年金収入が400万円以下で、家賃収入が年間20万円超えていても、このような諸経費を差し引いて所得が20万円以下になれば、確定申告は不要です。
 

納め過ぎた源泉徴収分は確定申告で取り戻す

確定申告が不要な場合でも、納め過ぎたお金を取り戻したい場合は、確定申告が必要です(還付申告)。例えば、医療費控除や寄附金控除等による源泉徴収分の還付申告や、株式の損失の繰り越しする場合が該当します。
 
また、家賃収入より経費が大きい場合は不動産所得が赤字になりますが、他の所得の利益から差し引くことができます(損益通算)。この場合も、確定申告が必要です。ただし、借入金の利子分については、損失額に含まれず、他の所得との損益通算はされないことに注意が必要です。
 
そして、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要な場合があります。住民税については、お住まいの市区町村におたずねください。
 

出典

国税庁 年金生活者の皆様へ 所得税の確定申告が不要になる場合があります!!

国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

国税庁 No.2100 減価償却のあらまし

国税庁 No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算

国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識

 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者