医療費控除したいけど、医療費のお知らせに転職前の記述がない! そんなときの3つの対処法
配信日: 2023.03.14
病院通いが続いているA子さんは、毎年、医療費控除の申告をしています。源泉徴収票は、前職の分も含めて今の職場で年末調整をしてもらいました。しかし、医療費通知書は、転職後に医療機関にかかった分しか渡されませんでした。
これまでは「医療費のお知らせ」を利用して申告してきましたが、領収書から明細書を作るのか、お知らせを発行してもらうのか悩んでいます。
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執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
医療費控除には「医療費控除の明細書」が必要
確定申告には、「医療費控除の明細書」を添付する必要があります。
明細書は医療機関の領収書に基づいて作成しますが、枚数が多いと明細書を作るのも大変です。国税庁のホームページにある「医療費集計フォーム」を利用すると領収書の集計がスムーズに行えますが、それでも一仕事です。そして、明細書の基となる領収書は、5年間保存しなければなりません。
協会けんぽや健康保険組合から職場に送られてくる「医療費のお知らせ」を利用すると、医療費の明細書を簡略化できます。さらに、領収書の5年間保管についても、「医療費のお知らせ」を利用すると、お知らせに記載された分の領収書の保管は不要です。
ただし、「医療費のお知らせ」は、申告する年分の1月から12月ではなく、前年の10月から申告する年分の9月までしか記載されていません。そのため、申告年分の10月~12月に医療機関にかかった場合は、領収書から医療費控除の明細書を作る必要があります。
「医療費のお知らせ」を発行してもらう
10月~12月分の領収書の処理は、領収書から明細書を作るより手間がかかりません。5年間の保存も必要がありません。A子さんは、「医療費のお知らせ」を発行してもらおうと考えています。
「医療費のお知らせ」は、現在加入している保険者から事業者(会社)へ送られ、会社から社員に渡されるものです。退職済みの人の分は本人に渡されることなく、保険者に返送されてしまいます。わざわざ退職した社員の自宅まで届けるようなことはありません。
よって、「医療費のお知らせ」を発行してもらうには、前職の保険者(協会けんぽや健康保険組合等)に「医療費のお知らせ依頼書」を申請します。
「医療費のお知らせ依頼書」の記入には、申請する方の保険証の記号・番号が必要となります。退職するときに保険証は返さなければならないので、記号・番号が分からないということもあるでしょう。そのような場合は、事業所名と勤務期間を記入します。
申請をするだけですが、この間に領収書を「医療費集計フォーム」で集計すれば済むかとA子さんは思っています。
マイナポータル連携で自動入力
ところで、令和5年1月から、マイナポータル連携の自動入力対象に、医療費データ、公的年金の源泉徴収票、国民年金保険料が加わりました。以前より連携ができる、ふるさと納税、生命保険、地震保険、株式特定口座、住宅ローン控除関係とで、8種類のデータがマイナポータル連携により一括自動入力ができるようになりました。
それにより、年の途中で転職して保険証が変わっても、申告年分の医療費のデータが自動入力されます。「医療費のお知らせ」の発行依頼をしなくても、10月~12月分の医療費の明細書を作らなくても、医療機関にかかったデータを取得できます。
「これだ!」と思ったA子さん。マイナンバーカードを所持しているものの、これまではIDパスワード方式でのe-Taxで申告してきましたが、今回からマイナンバーカードでの申告をすることにしました。
利用する場合は、マイナンバーカードが作成済みであることに加えて、初回に一度だけ手続きが必要です。手続き方法は、「マイナポータル 確定申告の事前準備について」をご覧ください。初回手続き後、実際にマイナポータル連携によりデータの取得ができるのに数日要することがあります。ご利用になる前に、前もって設定をしておくとよいでしょう。
マイナポータル連携につきましては、国税庁ホームページ「マイナポータルと連携した所得税確定申告手続」「国税庁動画チャンネル」をご参考にしてください。
出典
国税庁 令和4年分 確定申告特集 医療費控除を受ける方へ
国税庁 マイナポータルと連携した所得税確定申告手続
マイナポータル 確定申告の事前準備について
国税庁 動画チャンネル
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者