配当控除の控除率と損益分岐点とは?
配信日: 2023.04.12
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
配当所得を含めても、その年分の課税総所得金額等が1000万円以下の場合
配当所得を含めて、その年分の課税総所得金額等が1000万円以下の場合は、配当控除の控除率は以下のとおりです。
ETFを含む剰余金の配当等にかかる配当所得の場合、所得税では配当金額の10%、住民税では配当金額の2.8%です。証券投資信託の場合は、所得税では配当所得の5%、住民税では配当所得の1.4%なのですが、外貨建て等証券投資信託の場合は、所得税では配当所得の2.5%、住民税では配当所得の0.7%です。
その年分の課税総所得金額等が1000万円未満だったが、配当金を含めた結果、1000万円を超えた場合
もともと、その年分の課税総所得金額等が1000万円に満たなかったが、配当金を含めたその年分の課税総所得金額等が1000万円を超えた場合は、どうなるのでしょうか。
例えば、配当金を含めない場合の課税総所得金額等が940万円、配当所得を含めた課税総所得金額等が1020万円だった場合を考えてみましょう。配当所得は80万円になりますが、この配当所得の内訳が、ETFを含む剰余金の配当等にかかる配当所得が70万円、外貨建てではない証券投資信託にかかる配当所得が10万円だったとします。
この例の場合ですと、ETFを含む剰余金の配当等にかかる配当所得が70万円のうち60万円までの控除率が所得税で10%、住民税で2.8%です。そして残りの10万円の控除率は所得税が5%、住民税で1.4%になります。また外貨建てではない証券投資信託の配当所得10万円の所得税控除率は2.5%、住民税では配当金額の0.7%です。
配当金を除いたその年分の課税総所得金額が1000万円超の場合での配当控除
では、配当金を除いたその年分の課税総所得金額が1000万円超の場合での配当控除を考えてみます。
ETFを含む剰余金の配当等にかかる配当所得の場合、所得税では配当金額の5%、住民税では配当金額の1.4%です。外貨建てではない証券投資信託の場合は所得税では配当所得の2.5%、住民税では配当所得の0.7%なのですが、外貨建て等証券投資信託の場合、所得税では配当所得の1.25%、住民税では配当所得の0.35%です。
配当控除の損益分岐点
さて、配当所得を総合課税で確定申告を行って配当控除を受けたほうが有利なのか否か、いわば配当控除の損益分岐点を考えてみたいと思います。なお、ここでは復興特別所得税を含めずに検討することにします。
もともと配当所得は、税金を源泉徴収されるので確定申告をする必要はありません(=配当所得の申告不要制度)。源泉徴収税率は20%です。総合課税で確定申告を行ったときの税率から配当控除率を差し引いた「配当所得の実質税率」が源泉徴収税率を下回れば、総合課税で確定申告を行ったほうが有利といえます。
配当所得を含めた課税総所得金額等が330万~694万9000円の場合、所得税率が20%、住民税が10%の計30%ですが「配当所得の実質税率」は17.2%になり、源泉徴収税率を下回っています。
しかし、配当所得を含めた課税総所得金額等が695万〜899万9000円の場合、所得税率が23%、住民税が10%の計33%ですが、「配当所得の実質税率」は20.2%になり、源泉徴収税率を上回りますので、配当所得を総合課税で確定申告をしないほうがよいことになります。
つまり、配当所得を総合課税で確定申告を行って配当控除を受けたほうが有利なのは、損益分岐点が配当所得を含めた課税総所得金額695万円以下という結論を得ることができそうです。
出典
国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
国税庁 No.1250 配当所得があるとき(配当控除)
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役