更新日: 2023.07.16 控除
児童手当拡充により扶養控除が廃止の可能性!? 年収いくらだとマイナスになるのか?
こちらの記事では、児童手当拡充と扶養控除廃止が行われたときの具体的なシミュレーション例などを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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児童手当の拡充・扶養控除の縮小が議論されている背景
岸田内閣が推進しようとしている「異次元の少子化対策」の一環として、児童手当の拡充が議論されています(※1)。
現状の児童手当の支給対象となっているのは「中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方」ですが、これについて、高校卒業まで支給することを検討しています。支給期間が延長されれば、最大36万円が追加で受給できることになるため、一見すると子育て世帯にとってありがたい制度改正です。
しかし、一方で「予算を確保する」という観点から、扶養控除の見直しも併せて検討されています。扶養控除とは、控除対象扶養親族がいる場合に扶養者の税負担を軽減する仕組みで、16~18歳の子どもがいる場合は、1人につき38万円を所得から控除されます(※3)。例えば、所得税率10%の人であれば年間の所得税が約3万8000円安くなる計算です。
今回、政府内では「児童手当を拡充するが、予算を確保するために扶養控除を撤廃する」ことも議論されています。
子1人の3人家族でシミュレーション
児童手当が拡充されると、高校生の子どもも年間12万円の支給が受けられます。児童手当の拡充は家計にとってプラスに作用しますが、扶養控除の撤廃は家計にとってマイナスに作用します。現行の扶養控除では、一般の控除対象扶養親族の場合、所得税は38万円・住民税は33万円が所得から控除されます。
共働き夫婦で、子どもが高校生以降になっても児童手当が支給される一方で、扶養控除が撤廃されるとどうなるのか、シミュレーションしてみましょう。なお、諸条件により金額には差が出ることがあります。
扶養者の年収が300万円の場合
年収300万円の人が扶養控除を受けられなくなった場合、年間の税負担は下記のように約5万2000円増加します。
●所得税(所得税率5%で算出、復興特別所得税含む):約1万9000円
●住民税:約3万3000円
児童手当から差し引きすると、最終的な支援効果は約6万8000円となる計算です。
扶養者の年収が500万円の場合
年収500万円の人が扶養控除を受けられなくなった場合、下記のように年間の税負担は約7万2000円増加します。
●所得税(所得税率10%で算出、復興特別所得税含む):約3万9000円
●住民税:約3万3000円
児童手当から差し引きすると、最終的な支援効果は約4万8000円となる計算で、受給した児童手当の恩恵が半分以下になってしまっています。
扶養者の年収が900万円の場合
年収900万円の人が扶養控除を受けられなくなった場合、下記のように年間の税負担は約12万2000円増加します。
●所得税(所得税率23%で算出、復興特別所得税含む):約8万9000円
●住民税:約3万3000円
児童手当を年間12万円受給しても、税負担が支給額を約2000円上回ってしまいました。
所得税は、所得が高い人ほど負担が重くなる仕組みとなっているため、所得が高い人は「結果的に損をする」可能性があります。
まとめ
子育てに関する経済的不安を感じる人は多いことから、児童手当を拡充して子育てを支援する意義は大きいです。しかし一方で、子育て世帯の方は、予算の観点から扶養控除の撤廃や縮小が検討されている点も意識しましょう。人によっては、最終的な損益がマイナスになってしまう可能性があります。
「異次元の少子化対策」は、今後さらに詳細が詰められることになりますが、最新情報を追って「自分たちにどのような影響があるのか」をチェックすることが大切です。
出典
(※1)こども未来戦略会議 「こども未来戦略方針」案
(※2)内閣府 児童手当制度のご案内
(※3)国税庁 No.1180 扶養控除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー