更新日: 2023.08.17 その他税金
【増税が進む岸田政権】「サラリーマン増税」で退職金・通勤手当はどうなるの? 実際の金額で試算
本記事では、サラリーマン増税について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
「サラリーマン増税はしない」のに話題になっている理由
松野官房長官は7月26日の記者会見において、「サラリーマンを狙い撃ちにした増税は行わないという考え」と明言しています。ではなぜ、サラリーマン増税が話題に上ったのでしょうか?
ことの発端は政府税制調査会がまとめた中期答申の中に、退職金課税や通勤手当課税の検討が含まれていたからです。これに対して一部のメディアが「サラリーマン増税」と報道し、SNSなどでは怒りの声が上がったという流れとなっています。
退職金課税とは
退職金はその会社に勤めてきた功績に対して支払われるものであり、また退職した後の生活費を支える役目のある大切なお金です。よって、退職金に対する課税においては、退職金の金額から、比較的大きな金額になりやすい「退職所得控除」を差し引いて税率が乗じられる仕組みになっています。
計算は、(退職金額-退職所得控除額)×1/2= 退職所得の金額で、退職金の金額と勤続年数によっては、税金ゼロで退職金を全額受け取ることができる場合もあります。退職所得控除の金額は図表1のとおりです(「A」は勤続年数)。
【図表1】
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
例えば、22歳から65歳までの43年間勤めた会社を定年退職し、退職金を2000万円受け取った場合の税金を計算してみましょう。
・退職所得控除
800万円+70万円×(43年-20年)=2410万円
・退職所得
(2000万円-2410万円)×1/2<0円
退職金より退職所得控除の方が大きいため退職所得は発生せず、2000万円の退職金を受け取ったとしても無税で済むのです。
退職金課税はどう変わる可能性があるの?
非常に優遇されている退職金課税ですが、政府は20年超の算式「800万円+70万円×(A-20年)」の「70万円」部分を、20年以下と同じ40万円にすることを検討しているのではといわれています。
勤続年数43年で退職金2000万円を受け取った場合、現時点において所得税は発生しませんでしたが、もしこの改正が現実となった場合には、以下のとおり税金が21万円発生することになります。
・退職所得控除
40万円×43年=1720万円
・退職所得
(2000万円-1720万円)×1/2=140万円
・税金
140万円×(所得税率5%+住民税率10%)=21万円
通勤手当課税とは
通勤手当については非課税限度額が設けられており、その範囲内の支給であれば課税の対象外となっています。図表2はマイカーや自転車などで通勤する人の非課税限度額の表です。
【図表2】
国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
例えば、片道通勤距離5kmの人が毎月4200円の通勤手当を受け取っている場合、年間で5万400円になりますが税金はかかっていません。
通勤手当はどう変わる可能性があるの?
通勤手当については、「非課税等とされる意義が薄れてきているとみられるものがある場合には検討を加えることが必要」とされており、明確にどこをどう検討するのかまではわかっていません。
仮に非課税限度額を廃止するとなった場合には、所得税率10%の人が年間5万400円の通勤手当を受け取ったとすると、5万400円×(所得税率10%+住民税率10%)=1万80円の税金がかかることになります。
通勤手当は通勤に使っているお金であり、手元に残らないにもかかわらず、その上さらに税金を取られるとなると納得がいかない人もいるでしょう。
まとめ
政府は「サラリーマン増税はしない」と言っていますが、本当のところはわかりません。
退職金と通勤手当への課税は、サラリーマンのほとんどに関係する大きな問題です。特に退職金課税に関しては老後設計を見直さなければならない人も出てくるのではないでしょうか。今後の動向が注目されます。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー