医療費控除の申請を忘れていた! 今からでも間に合う?
配信日: 2023.09.05
とは言え、毎年確定申告をしている人でない場合、慣れない作業へのハードルは高く、後回しにした挙句に申請し忘れるといったケースも散見されます。
確定申告の期限は過ぎてしまっても間に合うのでしょうか。医療費控除の申請を忘れた場合の対応についてお伝えします。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP®認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
医療費控除とは?
医療費控除は、「所得控除」のひとつです。給与や事業などによる個人の所得に対しては、所得税などの税金がかかります。所得が多いほど税負担も大きくなりますが、それぞれの事情に応じた控除をすることで税計算の対象となる課税所得金額を小さくし、結果として税負担が軽減されます。
所得控除には、社会保険料控除や扶養控除など15種類あり、医療費控除はそのひとつです。
自分だけでなく、生計を同じくする親族も含め、1月1日から12月31日の1年間で支払った医療費にもとづいて控除額が決まります。病気やけがなどで多額の医療費がかかった人には、一定のルールのもと「医療費控除」を認めることで税負担を軽減させるという納税者に対する配慮とも言えます。
医療費控除は、翌年の確定申告期限までに行うのが原則
医療費控除の適用を受けるためには、原則として、確定申告をする必要があります。
個人事業主の場合、事業収入とともに所得控除として医療費控除を申告します。確定申告は、毎年2月16日から3月15日(土日祝日を除くため年度による)までの申告期間中に申告しなければなりません。
一方で、会社員などすでにお勤め先で年末調整が行われている場合、医療費控除は年末調整で控除することができないため、申告をすることで改めて税額を確定させ、納め過ぎた所得税があれば還付請求をします。この手続きを「還付申告」と言い、翌年1月1日から確定申告期間前でも確定申告書を提出することができます。
申請し忘れた場合の対象方法
医療費控除などの還付申告は、5年以内であれば、確定申告の期限を過ぎてもさかのぼって申告することができます。2023年8月に気づいた場合、2022年分だけでなく、2018年分まで申告可能ということです。
ただし、会社員など医療費控除がなければ確定申告の必要がない(確定申告をしなかった)人と、個人事業主など確定申告をした人とでは申告が異なります。
確定申告をしなかった人
本来であれば確定申告が不要(年末調整で課税が終了)の人が、医療費控除をしていなかったことに気づいた場合、さかのぼって「還付申告」を行うことができます。
その年度の医療費明細書とともに、税務署に設置されている、もしくは国税庁のホームページでダウンロードできる確定申告書(還付申告書という用紙はありません)を作成して提出します。
申告書には、その年の収入額や社会保険料などの所得控除、所得税額を記載する必要があるため、源泉帳票などを用意しておきましょう。
確定申告をしたが、医療費控除を申告していなかった人
すでに確定申告をしている人の場合は、申告した内容を更正する手続き(「更正の請求」と言います)が必要です。
更正の請求では「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」を法定申告期限(翌年3月15日)から5年以内に税務署に提出します。注意すべき点として、更正の請求の「理由」とともに、事実を証明する書類を添付します。つまり、還付申告であれば、医療機関や支払った金額を記載した医療費明細書の添付でよいのですが、更正の請求では、領収証やレシート等の原本を添付する必要があります。
なお、本来は確定申告不要の会社員などが住宅ローン控除の初年度適用等のため年末調整後に還付申告をしていた場合には、申告期限は、申告書を「提出した日から」5年以内となります。例えば、2019年2月1日に還付申告をしていた場合には、2018年分の医療費控除についての更正の請求は、2024年2月1日が期限です。
まとめ
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日の間で支払った医療費が多額となった場合、一定のルールに従って税負担が軽減される制度です。病気やケガによる支出が生活に影響を与えることもあり、さらに税金が重い負担とならぬように配慮されています。
ほかの所得控除のように年末調整できず、確定申告が必要なこと、医療費の明細書が必要なことなど、面倒くさいと思いがちですが、忘れずに申告するようにしましょう。もし申告し忘れても、5年以内であればさかのぼって申告することが可能です。
ここでは、対象となる医療費や還付される金額など医療費控除の詳細には触れませんでしたが、注意点として、通院費でもタクシー代や自家用車での駐車場料金などは医療費控除の対象外ですし、支払った医療費がそのまま還付される訳ではありません。医療費控除の概要について理解したうえで申告することをおすすめします。
執筆者:大竹麻佐子
CFP(R)認定者・相続診断士