子どもが幼いときに親が保険契約。子どもの成人に伴う契約者変更と課税関係とは?
配信日: 2023.09.13
<契約の例>
契約者(保険料支払者)母親:35歳
(ただし、契約から15年がたったときに契約者を娘に変更する)
被保険者:娘(10歳)
満期金受取人:娘
保険金受取人:法定相続人
養老保険:月払い保険料1万円 保険期間は30年
満期金額360万円 保険金額360万円
この契約において、契約から15年がたったときに契約者を母親から娘に変更した場合、贈与税は課税されるのでしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
契約者を変更した時点では課税関係は生じない
以下のいずれにも該当しない場合、本稿では、生命保険の契約者を生存する個人から個人に変更したケースとします。生命保険の契約者を変更した時点では課税関係は生じませんが、受取時に課税関係が生じます。
・契約者の相続に伴う、生命保険の契約者変更
・生命保険の契約者が法人(会社など)から個人に変更
契約者変更により課税関係が生じるのは受取時
契約者の変更によって課税関係が生じるのは、解約返戻金や満期金、保険金のいずれかを受け取った時点です。では、受け取った時点で、どのような課税関係が生じるのでしょうか? 前述の契約の例で見ていくことにしましょう。
契約から30年がたち、娘が満期金を受け取った場合の課税関係は次のとおりです。満期金のうち、母親が保険料を負担した期間に相当する額(=180万円)が贈与税の対象で、娘が保険料を負担した期間に相当する額(=180万円)が一時所得(所得税・住民税)の対象となります。
満期を待たずして、解約返戻金を受け取った場合の課税関係も、満期金を受け取った場合の課税関係と同じ考え方です。
<契約者変更により課税関係が生じる場合…… 相続では?>
契約から20年がたったところで、被保険者(=娘)が亡くなり、被保険者の法廷相続人が保険金を受け取った場合の課税関係はどうなるのでしょうか。
保険金のうち母親が保険料を負担したいわゆる全体の20分の15の期間に相当する額(=270万円)が贈与税の課税対象で、残りの娘が保険料を負担した、いわゆる全体の20分の5の期間に相当する額(=90万円)が相続税の課税対象ということになります。
まとめ
生命保険の契約者を変更した時点では課税関係は生じませんが、受取時に課税関係が生じます。そして「変更前」と「変更後」に分けて、課税関係を判断することになるのです。
相続時精算課税を除き、贈与した年の翌年に贈与税額を計算し、贈与税の申告と納税を行うので留意しましょう。
出典
国税庁 生命保険契約について契約者変更があった場合
国税庁 贈与税の対象になる生命保険金
国税庁 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役