令和5年10月スタート! 消費税インボイス制度開始に向けて、免税事業者が絶対に知っておくべき「経過措置」とは?

配信日: 2023.09.21

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令和5年10月スタート! 消費税インボイス制度開始に向けて、免税事業者が絶対に知っておくべき「経過措置」とは?
すでにご承知のとおり、消費税のインボイス制度が2023年10月1日より開始されます。
 
新たな制度であるため、各事業者がその準備や対応に戸惑うこともあるようですが、特に、免税事業者として消費税の納税負担がなかった小規模事業者は、制度開始以降の対応に少々の不安を感じている場合もあるのかもしれません。
 
この記事では、このような小規模事業者を対象とした経過措置の内容について確認してみたいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

インボイス制度開始後の免税事業者への影響

インボイス制度開始後に、課税事業者が免税事業者等と取り引きをした場合、適格請求書(インボイス)の発行を受けることができないため、仕入れ税額控除は認められなくなります。このようなケースで課税事業者から、消費税分の値引き要求が来ることも想定されます。
 
さらに、課税事業者側が免税事業者と取り引きをするより、インボイスの発行を受けることができる適格請求書発行事業者との取り引きを望むことも想定され、仕事自体が減ってしまうこともあり得ます。
 
その一方で、インボイスの発行を可能とするなどの理由から、免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合には、課税事業者となることにもなるため、これまで必要がなかった消費税の計算事務や納税負担を負うことになります。このような変化の影響を緩和するため、一定期間の経過措置が設けられています。
 

2割特例について

インボイス制度の開始を機に、これまで免税事業者であった小規模事業者が、適格請求書発行事業者となった場合、一定期間の仕入れ税額控除の金額を特別控除税額(売上げにかかる消費税額の80%)とし、それを差し引いた20%を納付する制度です。
 
つまり、2割特例は適格請求書発行事業者となる小規模事業者側を対象とした経過措置です。これによって、以前、消費税を全く納税していなかった免税事業者が、適格請求書発行事業者として課税事業者となった場合の急激な消費税の納税負担増を一定期間抑え、2割の負担に軽減することができます。
 
2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日が属する各課税期間となります。つまり、個人事業者の場合は、課税期間が暦年ですので、令和5年分から令和8年分までの計4回の消費税申告が適用範囲になります。
 
また、通常の消費税計算では、一般課税の場合には仕入れや経費の額についての「仕入れにかかる消費税額」を実額で計算し、控除する必要があります。2割特例の場合には、仕入れ税額を実額で計算する必要はなく、売上げにかかる消費税額を業種にかかわらず、一律で2割納付するため、事務負担も軽減されることになります。
 
さらに、基準期間の課税売上高が1000万円を超える事業者などの一部を除き、対象となる事業者は事前の届け出などがなくても適用を受けることができます。
 

8割控除について

インボイス制度開始後は、免税事業者等の適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れの際に、仕入れ税額控除のために保存が必要となる請求書等(インボイス)の交付を受けることができないため、仕入れ税額控除を行うことができなくなります。
 
このような急激な変化に対する影響を軽減するため、一定期間は適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについて、仕入れ税額相当額の一定割り合いを仕入れ税額とみなして控除できる経過措置(通称8割控除)がもうけられています。
 
つまり、8割控除は、免税事業者等と取り引きをする事業者を対象とした経過措置です。課税事業者が経過措置を適用できる期間は以下のとおりです。上記の2割特例の適用期間とは異なるので注意が必要です。


(1)令和5年10月1日から令和8年9月30日まで 仕入れ税額相当額の80%
(2)令和8年10月1日から令和11年9月30日まで 仕入れ税額相当額の50%

上記のとおり、6年間に渡り経過措置の適用を受けることができます。
 
経過措置の適用を受ける場合には、これまでと同様に帳簿および請求書等の保存(区分記載請求書等保存方式)が必要となり、「80%控除対象」など経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載も、個々の取り引きごとに必要となります。
 

まとめ

他にも、免税事業者がインボイス発行事業者に登録した場合に持続化補助金が一律50万円加算される措置や、より安価な会計ソフト導入などに利用するためのIT導入補助金の下限額の撤廃など、さまざまな支援措置があります。
 
免税事業者から、今後、適格請求書発行事業者になるかどうかを迷っている方は、経過措置や支援措置の内容を理解しつつ、インボイス制度開始後の主要な取引先との実際の対応なども聞きながら、相談することが重要と思われます。
 

出典

国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
国税庁 消費税の軽減税率制度・適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)お問合せの多いご質問(令和5年8月21日掲載)
財務省 令和5年度改正におけるインボイス制度の改正について
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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