更新日: 2023.09.27 その他税金

退職金にかかる「税金」が増税!? 私たちの退職金はどうなるの?

退職金にかかる「税金」が増税!? 私たちの退職金はどうなるの?
最近話題となっている「退職金への課税強化」について、気になっている方もいるのではないでしょうか。なぜ、急に退職金にかかる税金が増税されると言われはじめたのでしょうか。そして私たちの退職金はどうなるのでしょうか。退職金の今後について考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

「退職金にかかる税金が増税される」と騒がれだした原因

退職金にかかる税金が増税されると騒がれはじめたきっかけは、令和4年10月18日に行われた税制調査会にさかのぼります。
 
この会議の中で、度々退職金についての話題が出されました。雇用の流動性に伴う人の移動に着目し、個人の挑戦が税制で妨げられないようにすることなどを理由に「退職所得控除については、勤続年数による差を設けずに一律とする改正を早急にするべきだ」という意見が出ていました。
 
他にも、働き方やライフコースの多様化を理由に「働き方によって不利となることがないように、退職金について重要な改革メニューとして挙げるべきだ」という声も上がっていました。
 
こういった調査会での様子が報道各社やSNSで拡散された結果、多くの方が「退職金にかかる税金は増税されるのでは」と心配な気持ちになっていったようです。
 

現在の退職金制度にまつわる税制はどうなっている?

現在の退職金制度は、勤続20年を超えることで、控除額(非課税となる範囲)が大幅に引き上げられていくような仕組みになっています。具体的に説明すると、退職所得控除額は20年以下だと40万円×勤続年数分ですが、20年を超えると、800万円に70万円×20年を超える部分の勤続年数をかけたものを足した額になります。
 
例えば、勤続年数が20年の場合は退職所得控除額が800万円ですが、21年になると870万円と大きく増加します。
 
また、実際に退職金にかかる税金の額は、退職金の総額から退職所得控除を差し引いた額を2分の1にした部分に、税率をかけて算出します。
 
参考までに、30年間勤務した方が退職金を2500万円受け取った場合、退職金にかかる所得税および復興所得税の額は58万4522円になります。なお、この場合に生じる住民税は50万円となります。
 
図表
 
図表
 
出典:国税庁 退職金と税
 
2500万円ものお金を受け取っても発生する税金は総額で100万円程度であり、現行の退職金に関する税制がいかに優遇されているかがよく分かります。
 

今後退職金の税制はどうなる?

今後の退職金に関する税制がどうなるのかは、まだ明確になってはいません。現状では次のようなものが想定されています。
 

●勤続年数20年超の場合、1年当たりの控除額が70万円から40万円になる
●勤続年数に関係なく控除額が一律となる

 
とはいえ、上記のどれも、これまでの税制調査会での発言などを踏まえた臆測にすぎません。6月に内閣府より公表された「経済財政運営と改革の基本方針 2023 について」においても具体的な内容が書かれていないことから、表向きだけならば、政府もいまだ具体的な部分については決めかねていると想定されます。
 
なお、上記の基本方針においては「自己都合退職による退職金の減額」という労働慣行の見直しについて言及していることから、退職時期によっては退職金に対する税が高くなったとしても、退職金自体の支給額が高まり、結果として退職金の手取り額が増えるという可能性もあるかもしれません。
 

まとめ

世間では「退職金にかかる税金が増税される」と騒がれていますが、実際にその内容が決まっているわけではありません。内容次第では「数千万単位の高額な退職金を受け取る人に対する増税」という結果にとどまる可能性もあります。
 
とはいえ、退職金に対する課税強化は、ライフプランに大きな影響を与えることになる可能性が高い事項です。しかしながら、一個人である私たちにできることが限られているのも事実です。
 
今から「退職金にかかる税金が増税される」と過度に不安になる必要はありませんが、現状の制度について理解し、政府の動向を注視しつつ、必要に応じて声を上げるなど、税制に関心を持つことは最低限必要といえるでしょう。
 

出典

国税庁 退職金と税

内閣府 税制調査会(第19回総会)議事録

内閣府 経済財政運営と改革の基本方針 2023 について

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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