年末調整で「28万円」還付されると思っていたのに、実際は「10万円」だった!? 住宅ローン控除について解説
配信日: 2023.09.28
一般的に年末調整で受けられる還付額は1、2万円程度という人が多いですが、住宅ローン控除がある人は10万円単位になることがあるからです。ただ、そのような人でも「期待していた金額よりも少なかった」という経験はありませんか?
マイホームを購入するときに、営業担当者から「税金が28万円返ってきます」と言われたにもかかわらず、還付額を見たら10万円だったというケースなどです。うそをつかれたのでしょうか? 本記事で、その真相を解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローン減税などとも呼ばれます。所得税に設けられている減税制度であり、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人が適用を受けられる制度です。
住宅ローン控除の減税額は、原則として住宅ローン年末残高の0.7%となっており、例えば2023年12月31日時点における住宅ローン残高が4000万円であれば、住宅ローン控除の金額は4000万円×0.7%=28万円となります。この28万円を所得税から差し引くことができるのです。
所得税から直接差し引ける「税額控除」である点が住宅ローン控除の大きなメリットであり、会社員の平均給与である年収443万円くらいの人であれば所得税は0円になるでしょう。
28万円還付されなかった理由
住宅ローンの年末残高が4000万円であれば住宅ローン控除の金額は28万円なので、年末調整で28万円返ってくるように思えます。
しかし、この28万円というのは住宅ローン控除の金額です。所得税から差し引ける住宅ローン控除が28万円あったとしても、所得税が10万円であれば還付金は10万円なのです。年収400万円の人の源泉所得税は大体10万円前後になるので、還付金も10万円前後が最大ということになります。
よって、マイホームを購入する際に営業担当者が話していた「税金が28万円返ってきます」というのは決してうそではありません。ただ、より正確に説明するのであれば、「税金が最大28万円返ってきますが、あなたの場合はこのくらいですよ」と言ってくれると親切だったかもしれません。
所得税で差し引けなかった分は住民税から控除される
住宅ローン控除が28万円あっても、所得税が10万円であれば還付金は10万円になります。では、差し引けなかった18万円はどうなるのでしょうか。これは住民税から控除してもらえる仕組みになっているので安心してください。
ただ、住民税から控除される金額には上限額があり、原則として9万7500円となっています。つまり、住宅ローン控除28万円、所得税10万円だった場合の還付額は、住民税と合わせて19万7500円です。残りの約8万円については残念ですが「捨て」となります。
まとめ
住宅ローン控除が28万円あったとしても年末調整で還付されるのは、1月から12月までに給与天引きされた源泉所得税の金額が最大です。
決して、28万円がまるまる還付されるわけではないということを知っておきましょう。マイホームを購入する際の営業トークとして、住宅ローン控除分まるまるの還付があるように言われる場合がありますが、鵜呑みにしてはいけません。自分の所得税を把握しておくと営業トークに流されずに済むでしょう。
出典
国税庁 No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
国税庁 令和3年分民間給与実態統計調査
長岡京市 住民税からの住宅ローン控除について
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士