「年収の壁」への助成金で、扶養の範囲を超えてもOKに? でも2025年になったら「社保強制加入」!?「年収の壁・支援強化パッケージ」について解説
配信日: 2023.10.14
年収の壁を気にせず働けるのは今後の2年ほどで、その後は一転して社会保険への加入が待っているかもしれません。一体どういうことなのでしょうか。本記事で解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
「年収の壁・支援強化パッケージ」とは
年収106万円または130万円の年収の壁を意識して働いている人は、「社会保険の扶養でありたい」という希望があります。壁を1万円でも超えてしまうと自身で社会保険に加入しなければならなくなり、手取りが減るからです。ただ、今の日本は少子高齢化の進行によって人手不足が深刻化しており、労働力の確保が急務となっています。
そこで政府は、年収の壁を意識せずに働くことができるように、助成金制度を打ち出しました。これが「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
年収106万円の壁には最大50万円の助成金
年収106万円の壁に対しては、壁を越えた場合でも手取り収入を減らさない取り組みをした会社へ、労働者1人当たり最大50万円の助成金が支給されます。具体的な取り組みとしては、社会保険適用促進手当の支給、時給アップによる基本給の増額、労働時間の延長などが挙げられます。
年収106万円の壁を超えた場合に社会保険に加入しなければならないのは同じですが、社会保険料の負担額が穴埋めされる仕組みです。
年収130万円の壁には事業主の証明で扶養継続
年収130万円の壁に対しては、繁忙期の残業などで一時的に収入が増えたことによって年収130万円を超えてしまった場合、事業主の証明があれば引き続き扶養のままでいられる措置が行われます。あくまでも一時的な事情に対する措置のため、原則として連続2年までが上限となります。
2025年には全労働者が社保強制加入になる可能性
年収の壁・支援強化パッケージはパートタイムで働く人にとって朗報といえるでしょう。ただし、一時的な経過措置であること、そして2025年には年金制度の改正が予定されている点に注意しなければなりません。
2023年5月に行われた厚生労働省の「第4回社会保障審議会年金部会」では、社会保険について大胆な適用拡大を進めていくべきとの意見が出ており、厚生年金保険料の下限8万8000円をさらに引き下げることも検討されています。
年収の壁・支援強化パッケージによって年収の壁を超える労働を定着させたうえで、一転して2025年中には全労働者に社会保険加入を求めることも考えられます。
まとめ
年収の壁・支援強化パッケージは、年収の壁を超えても実質的に社会保険の負担がない措置であり、社会保険料がなければまだまだ働きたいと考えている人にとって朗報といえるでしょう。
ただ目先だけでなく、期間限定の措置であること、その後は働く誰もが社会保険加入を求められる可能性があることも知っておきましょう。
出典
厚生労働省 いわゆる「年収の壁」への対応
厚生労働省 被用者保険の適用拡大
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士