更新日: 2023.10.22 控除
【年収の壁】「130万円」を超えても、2年間は扶養に入れるようになる? 制度のポイントと注意点を解説
この壁の存在によって多くの主婦(夫)が就労時間を制限することを余儀なくされており、それが日本全体の労働力不足につながっているといわれてきました。
厚生労働省は9月27日、この壁に対する支援強化のパッケージを公表しました。本記事では、今回の施策のポイントと注意点について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
「106万円の壁」に対しての支援策
パッケージの内容を解説します。まず1つめが、「106万円の壁」に対する支援策です(図表1)。
106万円の壁とは、会社員や公務員に扶養されている人が、従業員101人以上の企業で週20時間以上働いて年収106万円を超した場合、扶養から外れて社会保険に加入して社会保険料を支払う必要が出てくることを指します。
支援策の具体的な内容は、社会保険適用促進手当の新設と、キャリアアップ助成金の新設・拡充です。これらの支援策は、パート・アルバイトで働く従業員の年収が106万円以上になっても、従業員の手取り収入を減らさず、企業の負担も軽減するための施策です。
【図表1】
厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
社会保険適用促進手当の新設
従業員が106万円という年収の壁を超え、新たに社会保険料の被用者保険適用となった場合、企業は「社会保険促進手当」という名目で、本来社会保険料を支払うことで減る分の金額を従業員に支払うことができるようになります。こうすることで、従業員は手取りを減らさずに受け取ることができます(図表2)。
また、この手当で支払われた分の金額は、社会保険料の金額算定の元となる標準報酬月額に2年間は算入されません。
【図表2】
厚生労働省 「年収の壁」への当面の対応策
キャリアアップ助成金の新設・拡充
キャリアアップ助成金の新設によって、企業が労働者の収入を増加させる取組を行った場合、労働者1人あたり最大50万円の助成金が企業に支給されます。
この助成金は、先に述べた社会保険促進手当を企業が従業員に支給する場合にも、収入増加の取組として2年間は判定されるようになりました。条件が緩和された形で、企業側の社会保険料の負担減にもつながります。
特に、賃金の改定で、同じ時間勤務しても年収の壁を超えてしまうようになった従業員は無駄な調整を行わずに、2年間は今までどおり働いても手取り収入の減少を防ぐことができます。
「130万の壁」に対しての支援策:証明書の提出で2年間は扶養内が可能に
2つめは、130万円を超えることで扶養から外れ、国民年金や国民健康保険に加入が必要になる「130万円の壁」に対する支援策です。年収が130万円を超える場合でも、年収の増加が人手不足に伴う一時的なものであるという証明書を企業側から提出することで、2年間は扶養内にとどまることが可能になります(図表3)。
【図表3】
厚生労働省 「年収の壁」への当面の対応策
あくまで一時的な対策であることに注意
106万円の壁の対策も130万円の壁の対策も、最大2年間という限定的な支援策です。
106万円の壁については、令和6年10月には、従業員50人超の企業まで対象が拡大されることが発表されています。ただ、手当は直接従業員に支払われるわけではなく企業を通して支払うため、支払われた助成金が適切に従業員に支払われないリスクは排除しきれません。
130万円の壁についても、あくまで2年間と限定的であるため、仮に2年後に新たな支援策が打ち出されない場合には従業員の実質的な収入ダウンは避けられません。2025年に行われる年金法改正に向けたあくまで暫定的な対策であることから、そこまでのつなぎとしての一時的な対策であり、本質的な解決につながるとはいいがたい支援策です。
壁を超えるメリット・デメリットを理解した働き方を
今回の支援策で、2年間は年収の壁を超えても手取り収入の減少を防ぐことができるようになりました。106万円の壁は、厚生年金や健康保険の加入により手取り収入は減る反面、将来の年金や医療の保障が手厚くなるというメリットがあります。
130万円の壁は、扶養から外れることで国民年金・国民健康保険に加入することになり、自身で保険料を支払うことになります。物価高などの影響で家計の負担が増加している中、今回のような限定的なものではなく、本質的に家計の負担を軽減しつつ、同時に企業側の人手不足も解消する施策が打ち出されることが期待されます。
出典
厚生労働省 年収の壁・支援強化パッケージ
厚生労働省 「年収の壁」への当面の対応策
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー