更新日: 2023.10.26 その他税金
電子帳簿保存の義務化! タイムスタンプとは何ですか?
この記事では、2024年1月以降の対応のポイントを確認するとともに、保存する帳簿書類が原本であることを証明するために使用される「タイムスタンプ」について確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
個人事業者の私には関係ないの?
電子帳簿保存法の改正による保存ルールの変更の対象者は誰でしょうか? その対象者は、「全ての事業者」となります。ただし、全ての事業者とは「所得税や法人税の申告をする事業者」ということです。たとえ、消費税の免税事業者である、売上が1000万円に満たない小規模な個人事業者の場合でも、対象となるのです。
電子帳簿保存法で認められる保存方法とは
電子帳簿保存法の電磁的記録による保存は、以下の3種類に区分されています。
(1)電子帳簿等保存
自社(または納税者本人)が会計ソフト等で電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存する方法です。対象となる帳簿・書類には、仕訳帳、総勘定元帳などの国税関係帳簿と貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類が該当します。
(2)スキャナ保存
自社において紙で作成した書類や取引先から紙で受領した書類を、スキャン文書や画像データで保存するものです。なお、スキャナ保存を導入するかの判断は任意となっています。
(3)電子取引
書面ではなく、電子データでやりとりされる取引情報の記載事項全てのことを指します。請求書、見積書、納品書、注文書、領収書などの書類を、電子メールやEDI(電子データ取引)、クラウドサービス等によって授受することが電子取引に当たります。
これらについては、すでに2022年1月から紙での保存が禁止され、電子データのまま保存することが求められています。ただし、中小企業や個人事業者の体制準備に対する負担などへの配慮から、2023年12月末までは宥恕(猶予)期間として、従来どおりの紙での保存も認められていました。
つまり、2024年1月からは、この宥恕期間が終了し、個人事業者や法人の区別なく、電子取引で受領した領収書や請求書などは、電子データとして保存することが必須となります。
原本であることを証明するタイムスタンプ
タイムスタンプは、電子データが原本であることを証明するために付与されます。タイムスタンプが付与されることで、ある日時に特定の電子データが存在していたこと(存在証明)や、ある日時以降に電子データの内容に改ざんなどがないこと(非改ざん証明)が証明されます。
また、データの安全性や信頼性を確認できるようになり、文書に法的効力が生じます。さらに、電子書類に付与される「電子署名」に加えてタイムスタンプを付与することで、通常は最長5年の有効期限を10年まで延長することができます。
前述の電子帳簿保存法における3つの保存方法のうち、「スキャナ保存」と「電子取引」については、電子データによる保存の際、タイムスタンプの付与によって、改ざんや編集などが行われていない原本であることを担保する仕組みとなっています。
また、法改正により、スキャナ保存の導入を希望する事業に対しては、タイムスタンプの付与期間が、これまでの「3営業日以内」から「最長2ヶ月とおおむね7営業日以内」と大幅に緩和されています。
さらに、受領者の自署も不要となり、電子データの検索要件も「取引年月日」、「取引金額」、「取引先」の3つのみとなるなど、要件の緩和が図られています。
まとめ
2024年からの電子帳簿保存法への対応は、原則、全ての事業者が対象となります。特に、電子取引による電子データについては、これまでのように紙で印刷したものを保存する方法が原則禁止され、一定の保存要件を満たした方法で電子データとして保存することが義務化されます。
基本的には、電子帳簿保存法に対応した会計システムなどを導入すれば、保存要件や検索要件を満たした管理体制が構築できるでしょう。
長い期間、紙で印刷されたものをファイリングして保存する方法に慣れ親しんだ方々の中には、電子データでの保存に少し違和感や不安感を覚える場合もあるかと思います。しかし、この取り組みによって書類のペーパーレス化やセキュリティー体制の強化が実現され、将来的に業務全体の効率化につながるのではないでしょうか。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー