2024年から課税される「森林環境税」とは? 私たちの税負担が増えるの?
配信日: 2023.10.28
森林には、「地球温暖化防止」、「災害の防止」、「生物多様性の保全」などさまざまな役割があるといわれています。このような森林環境を保全する目的で新たに創設された「森林環境税」について、その仕組みや税負担について確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
森林環境税の創設経緯
気候変動問題に対する国際的な枠組みであるパリ協定における、日本の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るため、必要となる森林整備等に関する地方財源を安定的に確保する観点から、平成31年(2019年)3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立し、「森林環境税」および「森林環境譲与税」が創設されました。
私たちの税負担が増えるの?
森林環境税は、令和6年度(2024年度)から個人住民税の均等割の枠組みを用いて、国税として住民税納税者1人当たり年額1000円を市町村が賦課徴収するものです。つまり、国民が等しく負担する形で税負担を分かち合うことになります。
ただし、東日本大震災を踏まえ、地方自治体が緊急に実施する防災施策対応分の財源を確保するため、平成26年度(2014年度)から令和5年度(2023年度)までの10年間、個人住民税(都道府県民税・市町村民税)の均等割がそれぞれ500円ずつ(計1000円)引き上げられていました。
森林環境税は、この1000円の枠組みを利用して国税として徴収されるため、私たちの負担は、新たに増えることはありません。つまり、住民税の均等割の年額は、これまでどおり、標準税率で5000円のままということです。
森林環境税はどのように配分され、何に使われるのか?
森林環境税は、地方税である住民税の均等割の枠組みを利用して、国税として1人当たり年額1000円を市町村が賦課徴収するものです。そして、国が集めた税金は、「森林環境譲与税」という名称で、都道府県や市町村に配分されます。
森林環境譲与税は、市町村や都道府県における私有林人工林面積、林業就業者数および人口などによる客観的な基準で按分して譲与されます。
そして、配分された財源は、森林環境税および森林環境譲与税に関する法律に基づき、市町村においては、間伐等の「森林の整備に関する施策」と人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の「森林の整備の促進に関する施策」に充てることとされています。
また、都道府県においては「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てることとされ、総額の1割が譲与されることになります。
財源を利用した取り組み
森林環境譲与税は、既に他の財源を利用して都道府県および市町村に配分され、具体的な取り組みに利用されています。
森林整備関係の取り組みを中心として活用され、取り組み市町村数、活用額ともに増加しています(活用額:令和元年度65億円、2年度163億円、3年度217億円、4年度341億円、5年度467億円予定)。また、令和3年度(2021年度)の間伐等の森林整備が、令和元年度の約5倍に上る約30.8千haで実施されるなど、着実に進展しています。
まとめ
令和6年度(2024年度)から課税、徴収される森林環境税は、私たち国民が広く平等に負担するとの考えで、住民税の均等割の枠組みを利用して賦課徴収されます。対象となる納税義務者は、令和6年度からの試算で、約6200万人となります。
普段は、森林環境の整備、保全について意識している方はそれほど多くないでしょう。私たち国民の一人ひとりが、少しずつ平等に負担する税金が、森林環境税という名称となることによって、あらためて私たちが住んでいる国土の約7割を占める森林の重要性について、少しでも考えることができる機会となればよいのではないかと思います。
出典
林野庁 森林環境税及び森林環境譲与税
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー