更新日: 2023.11.11 その他税金

仕事を辞めた後に「税金」や「健康保険料」で苦しまないためには、どうしておくべき?

執筆者 : 柘植輝

仕事を辞めた後に「税金」や「健康保険料」で苦しまないためには、どうしておくべき?
仕事を辞めたあと、予期せぬ税金の支払いに驚くケースがあります。その原因は、税金についてよく知らなかったことが挙げられます。退職後に発生する税金や健康保険料などによって退職後の生活が安定せず、次の仕事を探す際に問題が発生することもあります。
 
そこで、仕事を辞める前に知っておきたい税金の知識について解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

収入がなくとも住民税は発生する

仕事を辞める前に知っておくべき税の知識に、住民税の関する事項があります。住民税は前年 (1月から12月まで) の所得に応じて、当年度 (6月から支払いが開始) の額が決まっています。そのため、会社を辞めて収入がない状態でも、辞める前の給与にもとづき住民税が生じます。
 
江東区の試算例を参考にすると、直前の1年間の給与収入が600万円で、34歳の妻と6歳の子を扶養する38歳の方の場合、翌年に約30万円の税金が発生することになります。月額換算では約2万5000円です。
 
このように、収入がない状態での住民税の負担は、決して小さいものではありません。仕事を辞める前から、計画的にそなえておく必要があるでしょう。
 

健康保険料 (税) をどうおさえるか

仕事を辞めると、翌日には勤務先の健康保険から脱退することになり、基本的には次の勤務先で社会保険に加入するまでの間は国民健康保険に加入します。
 
国民健康保険料 (税) には扶養の概念(がいねん)がありません。これまで発生しなかった配偶者や子の分の負担が生じる場合もあることから、一般的には支払う額が退職前に比べて高くなることもあります。
 
参考までに、東京都国立市在住の年収450万円の42歳世帯主と、その方に扶養される42歳の妻および12歳の子という世帯の場合、世帯の国民健康保険税は、年間でおおよそ36万円となるでしょう。
 
なお、資格喪失日から20日以内に手続きすることで、退職から最大2年間は、引き続き元の勤務先の社会保険に加入する 「健康保険の任意継続」 が可能になります。保険料は事業主の負担分がなくなり、全額自己負担となりますが、国民健康保険に加入するよりも安い場合があります。特に扶養する家族がいる場合などは、任意継続を選択する方がよい場合もあり得ます。
 
それをふまえ、退職後は住んでいる自治体の健康保険を管轄する窓口と、退職前に加入していた健康保険組合の両方に対し、手続きや保険料の額を確認し、安いほうに決めることをおすすめします。
 

国民年金保険料の支払いも生じる

会社を退職すると厚生年金を脱退して、国民年金へ加入することになります。国民健康保険と同様、国民年金には扶養の概念がないため、配偶者を扶養に入れていた場合は配偶者分の国民年金保険料の負担も生じます。
 
参考までに、令和5年度の国民年金保険料は、収入にかかわらず一律で1万6520円となります。夫婦合わせると3万3040円となります。
 
なお、国民年金への切り替え手続きは、住んでいる市区町村役場で行います。詳細については市区町村役場に相談してください。
 

確定申告で所得税が還付されることがある

一般的に会社員は、勤務先で年末調整を受けることで、所得税の還付 (かんぷ) を受けられることがあります。しかし、年の途中で年末調整を受けないまま退職すると、税金を払いすぎている場合があります。
 
その場合、翌年に確定申告することで、払いすぎた税金の還付が受けられる場合があります。詳細については、管轄する税務署へ相談してください。
 

まとめ

会社を辞めると収入が生じなくとも、住民税をはじめとした各種の税負担が発生します。また、年末調整を受けていない状態で退職し、その後、確定申告をしなければ、所得税を払いすぎている状態となり、損をする可能性もあります。
 
退職後に税金で苦しんだり、損をしないためにも、辞める前にきちんと税金について考えておくことが大切でしょう。
 

出典

江東区 住民税の税率・計算例(その1)
国立市 国民健康保険税のしくみ・計算方法について
全国健康保険協会 退職後の健康保険について
日本年金機構 国民年金保険料
国税庁 No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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