更新日: 2023.12.07 控除

娘が「やばい!バイトで稼ぎすぎたから扶養から外れたい!」と言ってきました。親の税負担はどのくらい増えますか?

執筆者 : 柘植輝

娘が「やばい!バイトで稼ぎすぎたから扶養から外れたい!」と言ってきました。親の税負担はどのくらい増えますか?
子どもが高校生や大学生となりアルバイトを始めると、多くの場合、最初は扶養の範囲内で働いていることでしょう。それから子どもがアルバイトに慣れてくると、もっと働くことを希望して「扶養から外れたい」と言い出すこともあるようです。そこで、子どもが扶養を外れた場合にどれくらい親の税負担が重くなるのか考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

子どもが扶養から外れると、なぜ税金が増える?

子どもを扶養に入れていると、その親の所得には「扶養控除」という控除が適用されます。それにより税金がかけられる前の金額、いわゆる課税対象となる部分の金額が小さくなります。
 
しかし、子どもが扶養から外れると扶養控除を受けられなくなり、課税対象となる部分が大きくなって税負担が重くなるのです。
 
子どもが扶養に入っていることで適用を受けられる扶養控除の額は、子どもの年齢によって変化します。具体的には、子どもの年齢が16歳以上であれば一般の「控除対象扶養親族」に該当します。また、19歳以上23歳未満であれば「特定扶養親族」に該当します。
 
所得税の場合でいうと、子どもが一般の控除対象扶養親族であれば38万円が控除されます。特定扶養親族であれば63万円の控除になります。住民税の例でいうと、一般の控除対象扶養親族は33万円、特定扶養親族は45万円が控除されます。
 

仮に扶養から外れたら、どのくらい税負担が増える?

続いて、子どもが扶養から外れたらどのくらい税負担が増えるのか考えてみましょう。所得税の税率は収入や控除によって変動します。
 
例えば、年収500万円で所得税の税率が10%の方において、20歳の子どもが扶養から抜けたと仮定します。すると、特定扶養親族の子どもが扶養から外れるため、63万円分の控除額が少なくなります。
 
つまり、この63万円に所得税がかかるようになるというわけです。この額に10%の税率をかけると、6万3000円の増加となり、かなり大きな額の所得税の負担が増えることが分かります。仮に所得税の税率が20%の方であれば、12万6000円と、増加する所得税の負担額はさらに大きくなります。
 
また、住民税は所得にかかわらずおおむね10%の税率となります。住民税における特定扶養親族の扶養控除額は45万円なので、仮に10%として考えると、扶養から外れることで増える住民税額は4万5000円となります。
 
つまり、20歳の子どもが扶養から抜けることで、所得税と住民税を合わせて、年間10万8000円もの税負担が増えることになります。
 

子ども本人にも税や社会保険の負担が生じることもある

一定時間数以上アルバイトをすると、学生であったとしても親の社会保険の扶養から抜け、自ら社会保険に加入しなければならなくなります。要は、子どもが勤務先で健康保険と厚生年金に加入し、自分の給与から保険料が天引きされるわけです。
 
基本的には、所定労働時間および所定労働日数が一般社員の4分の3以上となるとき、扶養から抜け、勤務先で社会保険に加入します。
 
また、学生でなければ年間のアルバイト代が103万円、学生であれば年間のアルバイト代が130万円を超えた際に所得税も発生します。住民税は自治体によって変わる部分もありますが、100万円前後から生じるようになります。
 
扶養から抜けるほど働くと、親に生じる税負担だけでなく本人にも一定の負担が生じることになる点は、本人に伝えておく必要があるでしょう。
 

まとめ

扶養に入っている子どもが扶養から外れると、親の年収が500万円だと仮定した場合、子どもの年齢によっては10万円以上の税負担が生じる可能性があります。
 
また子どもにとっても、扶養内であれば全額自分の手取りとなっていたものもそうではなくなり、税や社会保険の負担が生じます。それによって親子ともに負担が重くなり「扶養から出ない方がよかった」と感じることにもなりかねません。
 
もし、子どもがアルバイトで稼ぎすぎて扶養から外れることを検討しているのであれば、親子ともに生じる負担を簡単にでも試算し、その負担が許容範囲であるか確認するようにしておきましょう。
 
なお、所得税については住所地を管轄する税務署へ、住民税については住んでいる市区町村役場へ、健康保険や厚生年金については年金事務所へ相談してください。
 

出典

日本年金機構 年金Q&A (厚生年金の加入(被保険者))「私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。」

国税庁 No.1180 扶養控除

国税庁 専門用語集 特定扶養親族

国税庁 No.1175 勤労学生控除

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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