医療費控除10万円は「年収500万円」の夫が申請すべき? 妻が申請して「お得」になるケースを解説

配信日: 2023.12.23

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医療費控除10万円は「年収500万円」の夫が申請すべき? 妻が申請して「お得」になるケースを解説
医療費控除について、「配偶者が申請したほうがお得になる」と無条件に思っていませんか? もしも自身が専業主婦(主夫)で収入を得ていない場合や、扶養内で働いていて税金が発生していない場合などはそのとおりなのですが、共働きで自身も税金を納めている家庭では損をしているかもしれません。
 
本記事では、医療費控除を妻が申請したほうがお得になるケースについて解説します。
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

医療費控除とは

けがや病気で医療費がかさむと家計に負担となります。税金の計算では、その医療費負担を軽減させるために「医療費控除」という制度が設けられています。
 
医療費控除は所得控除の1つで、1年間で支払った医療費が10万円を超える場合には、超える分の金額をその年の課税所得から差し引くことができます。つまり、課税所得金額を減らせるので、所得税や住民税も減額されるのです。
 
医療費控除の金額は以下の算式で計算されます。
 

(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円(※)
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は「総所得金額等×5%」

 
なお、医療費控除は年末調整では受けられません。会社での年末調整が終わった後、自分で確定申告を行う流れになるので注意しましょう。
 

医療費控除の金額と節税効果

例えば、2023年中にかかった医療費の総額が30万円だったとします。そのうち、医療保険から10万円の保険金が出た場合の医療費控除額は、(30万円-10万円)-10万円=10万円となります。
 
次に医療費控除10万円によって節税できた金額ですが、医療費控除額に税率を乗じると求められます。所得税率10%の人の場合、医療費控除額10万円×20%(所得税率10%+住民税率10%※)=2万円です。
 
※住民税率は一律10%です。
 

妻が申請したほうがお得になるケース

医療費控除を妻が申請したほうがお得になるのは、夫に十分な所得控除や税額控除があり、医療費控除がない状態でも税金が発生していない場合です。税金が発生していないにもかかわらず、さらに控除を増やしても仕方がないといえるからです。
 
代表的な例としては「住宅ローン控除」があげられるでしょう。例えば、年収500万円の夫が住宅ローンを組んでおり、住宅ローン控除が25万円あるとします。年収500万円の所得税はだいたい13万円ほどなので、住宅ローン控除が25万円あれば所得税は0円になります。
 
そこに医療費控除が10万円あったとしても所得税は0円のままなので意味がありません。そこで代わりに妻が医療費控除を申請するとしましょう。例えば妻が年収300万円だった場合、所得税率は5%なので10万円×5%=5000円の節税につながります。
 
他にもお得になるのは、夫より妻の年収が高いことで税率に差がある場合です。住民税の税率は所得に関係なく一律10%ですが、所得税については所得に応じて段階的に税率が上がる累進課税制度となっています。
 
よって、同じ医療費控除10万円でも税率10%と20%では節税効果が倍変わることになります。妻のほうが所得税率が高いのであれば、妻が医療費控除を申請したほうがお得になるでしょう。
 

まとめ

医療費控除は何も考えずに申請すると損する可能性があります。夫婦それぞれの所得控除や税額控除の状況、適用される所得税率を確認し、どちらが申請したほうがお得かを判断してください。
 

出典

国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

国税庁 No.2260 所得税の税率

東京都主税局 個人住民税

 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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