更新日: 2023.12.27 控除

大学生がアルバイトをし過ぎると、日本学生支援機構の給付奨学金の受給に影響がでます!

大学生がアルバイトをし過ぎると、日本学生支援機構の給付奨学金の受給に影響がでます!
大学生になるとアルバイトをする人は多いと思います。実際、約8割の方がアルバイトをしています。アルバイトをする目的は、「貯金をするため」「学費・生活費のため」「趣味のため」などさまざまです。これから社会に出る学生にとっては、社会性を身に付ける良い機会です。
 
一方、アルバイトをし過ぎると学業に影響が出たり、親の税金が増えたりと、思わぬ影響を受ける可能性があります。また、日本学生支援機構の給付奨学金を受けている学生は、受給に影響がでるかもしれません。大学生も税法について知っておく必要があります。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

所得税103万円の壁

大学生のアルバイト収入が103万円以下であれば、本人が所得税を払う必要はありません。これを理解するには所得税の計算のしくみを知ることが大切です。次のプロセスを経て納付する所得税の金額を算出します。
 

(1) 1月1日から12月31日までの1年間の「収入」を計算する
(2) 収入から必要経費(給与収入なら給与所得控除)を差し引き「所得」を計算する
(3) 所得から所得控除の金額を差し引き、課税所得金額を計算する
(4) 課税所得金額に、所定の所得税の税率をかけて所得税の金額を計算する
(5) この金額から、住宅ローン控除などの税額控除を差し引き、納付する所得税の金額を計算する

 
給与収入が103万円(月額約8.5万円)の場合、給与所得控除額は55万円なので、給与所得の金額は48万円です。ここからすべての方に適用される「基礎控除」48万円を差し引くと課税所得金額は0円となります。
 
つまり、年間のアルバイト収入が103万円以下の大学生は所得税を支払う必要がありません。もし、アルバイト収入から源泉徴収されている場合、確定申告することで払い過ぎている税金を取り戻せる可能性があります。
 

所得税130万円の壁

勤労学生(年齢制限なし)であれば、一定の条件を満たすと勤労学生控除27万円が給与所得から控除できますので、学生本人が所得税を払わなければならない給与収入は130万円以下です。
 
ちなみに、勤労学生控除を受けるには、その年の12月31日の現況で、次の3つの要件のすべて満たす必要があります。
 

(1) 給与所得などの勤労による所得があること
(2) 合計所得金額が75万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
例えば、給与所得だけの人の場合、アルバイトの収入金額が130万円以下であれば給与所得控除55万円を差し引くと所得金額が75万円以下となります。
(3) 特定の学校の学生、生徒であること

 

子どもを親の税法上の扶養親族にするには

扶養している親族がいる場合、一定の要件に当てはまれば、扶養控除を受けることができます。扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の方は38万円、19歳以上23歳未満の方は63万円の所得控除を受けることができます。
 
「扶養親族」とは、その年の12月31日の現況において次のいずれにも該当する方をいいます。
 

(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)または、市町村長から養護を委託された老人であること
(2) あなたと生計を一にしていること
(3) その年の合計所得金額が48万円以下であること
(4) 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと

 
大学生のアルバイト収入が103万円を超えるとその年の合計所得金額が48万円を超えるので親は子どもを扶養に入れることはできません。つまり、親の税金が「63万円×税率」分増えてしまいます。
 

子どもを親の健康保険の被扶養者にするには

年間収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ、(1)同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、(2)別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満という条件を満たせば、子どもは親の健康保険の扶養に入ることができます。
 
つまり、子どものアルバイト収入が年間収130万円以上だと親の健康保険の被扶養者になれず、子ども自身が国民健康保険などに入ることになります。
 

住民税100万円の壁

通常、大学生のアルバイト収入が100万円を超えると住民税(所得割)、103万円を超えると所得税を本人が支払う必要があります。
 
高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金および入学金・授業料の減免)を受けるには、次の収入基準を満たす必要があります。
 

収入基準

学生と生計維持者(父母)の住民税情報により算出された支給額算定基準額(※)の合計が5万1300円未満であること
※支給額算定基準額=課税標準額×6%-(市町村民税調整控除額+市町村民税調整額)

 
この計算式からわかるように、学生の課税標準額(住民税)も審査対象です。高等教育の修学支援新制度を利用している大学生はアルバイトのし過ぎに注意しましょう。
 
なお、住民税の税務上の扶養に入れるのは、年間給与収入が103万円以下で、所得税と同じ基準です。アルバイトをしている大学生は、以上のことに留意しましょう。
 

出典

国税庁 所得税のしくみ

国税庁 No.1175 勤労学生控除

 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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