更新日: 2024.01.12 年末調整

毎年、年末調整で1万円ほど「還付」されるのに、今年は2000円「徴収」された!「賞与」が関係しているってどういうこと? 還付・徴収される理由をそれぞれ解説

執筆者 : 橋本典子

毎年、年末調整で1万円ほど「還付」されるのに、今年は2000円「徴収」された!「賞与」が関係しているってどういうこと? 還付・徴収される理由をそれぞれ解説
年末調整で所得税が還付されると、得をした気分になる人は多いでしょう。「払いすぎた所得税が戻ってきただけ」と分かっていても、何だか特別な臨時収入のようで「1年間頑張ったごほうび」の資金に使っているという人もいるのではないでしょうか。しかし時折、年末調整で所得税が追加徴収されることがあります。
 
本記事では、年末調整で所得税が追加徴収されるケースについて説明します。
橋本典子

執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)

特定社会保険労務士・FP1級技能士

年末調整で「還付」「徴収」をされる理由

会社員は、毎月の給与や賞与から所得税が源泉徴収されますが、その税額はあくまでも概算です。そのため年末調整で1年間の給与所得が出そろってから正確な所得税を計算し、徴収しすぎた分を本人に還付したり、逆に不足分を追加徴収したりします。
 

年末調整は天引きされた所得税の精算

毎月の給与から控除される所得税は「給与所得の源泉徴収税額表」から算出します。月の給与額から社会保険料を差し引いた額と扶養人数をもとに、この表を参照して、源泉所得税が決まります。
 
しかし、この源泉徴収税額は、その給与額が1年間変わらずに続くと仮定したざっくりしたものです。人によっては、毎月の給与が大きく変動することもあるため、あくまでも仮の額です。
 

年末調整で「還付」になるケース

会社員の人は、毎年11~12月頃に年末調整の申告書を会社に提出していると思います。このとき生命保険や個人年金保険料などの控除証明書も添付するでしょう。このような民間保険の保険料などは所得から控除されますが、制度上、毎月の源泉徴収税額表には反映されていません。
 
そのため、年末調整で各自の保険料などを控除した結果、所得税が抑えられ、払いすぎた所得税が還付されるのです。年末調整で所得税が還付されるのは、次のような場合です。

●生命保険料、個人年金保険料、地震保険料などを支払った
●配偶者の離職などの理由で、年の途中から配偶者控除の対象となった
●住宅借入金等特別控除(税額控除)があった
など

 

年末調整で「徴収」になるケース

年末調整では還付されることが多いのですが、逆に徴収されるケースもあります。それは次のような場合です。

●扶養親族の就職などにより、年の途中で扶養人数が減少した
●転職や給与の大幅な増加などにより、年の途中から給与収入が増えた
●会社の業績が良かったなどの理由で、多額の賞与が支給された
など

 

賞与が多いと年末調整で「徴収」になるのはなぜ?

賞与が多いと、年末調整で徴収になることがある理由を解説します。
 

賞与の源泉徴収の仕組み

賞与から差し引かれる所得税は、図表1の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」にのっとって計算します。前月の「課税給与額-社会保険料」と扶養人数をもとに、表を参照し、賞与にかかる源泉所得税の「税率」が決まります。
 
図表1

国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)
 
毎月の給与の源泉所得税は「給与-社会保険料」をダイレクトに国税庁の表に当てはめて計算しますが、賞与は賞与額を当てはめるのではなく、前月給与額を当てはめて、まず「税率」を求め、その税率を「賞与額-社会保険料」に乗じて計算します。
 
ただし前月に給与の支払いがなかった場合や、賞与が前月給与の10倍を超えている場合は、特別な計算方法になります。
 

賞与が原因となり年末調整で追加徴収となる場合

国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から求める源泉徴収税率は「賞与は毎月の給与の5ヶ月分」と仮定されたものです。そして表に当てはめるのは、賞与が支払われる「前月の給与額」です。
 
そのため賞与がとても多かったり、たまたま前月給与が普段より低かったりした場合などは、年末調整で追加徴収が起きやすいかもしれません。
 

まとめ

賞与から差し引かれる源泉徴収税の税率は、前月給与額から求めるため、普段の給与額に比べて多額の賞与が支払われると、年末調整で所得税が追加徴収されることがあります。
 
とはいえ、この場合は、賞与から控除された所得税が少なかったため、賞与としての振込額は多めだったはずです。年末調整で還付がなかったのは残念に感じるでしょうが、「1年間頑張ったごほうび」は賞与から出しましょう。
 

出典

国税庁 令和5年版源泉徴収のあらまし 第2 給与所得の源泉徴収事務
国税庁 No.2523 賞与に対する源泉徴収
国税庁 令和5年分源泉徴収税額表 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
 
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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