更新日: 2024.01.11 その他税金
消費税は10%ですが住民税も10%ですよね。年収1000万円の人は住民税だけで年間100万円払っているということですか?
同時に、大きな負担と感じるのが「住民税」です。一定の所得がある場合に課税されるため、消費税とは課税方式は異なりますが、所得に対して10%と言われています。
とすると、年収1000万円の人は年間100万円もの住民税負担となるのでしょうか。意外と知らない住民税について考えてみましょう。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
税金のキホン
私たちの生活において、社会保障や公共事業を維持運営するため、税金の果たす役目は大きく、欠かせない財源であることは確かです。所得税や住民税、消費税のほか、酒税や固定資産税、相続税などさまざまな種類の税金が存在します。
それぞれ目的や課税対象、課税方法によって分類は異なります。「直接税」か「間接税」かといった分類では、税金を納める人と負担する人が一致する「直接税」と税金を納める人と負担する人が異なる「間接税」があります。
消費税は、買い物をした人(消費者)は消費税を負担しますが、受け取った事業者が、商品などの仕入れのときに支払った消費税の額との差額を納める仕組みであるため「間接税」です。ちなみに、消費税の税収は、社会保障経費(年金、介護、医療、子ども・子育て支援)に充てることになっています。
住民税の課税方法
一方、所得税や住民税は、給与や事業による売り上げからその人ごとの負担能力に応じて税金額を算出し、納める「直接税」です。国に納める所得税は、1月1日から12月31日までの1年間の収入に対し、会社員であれば年末調整で、個人事業主などであれば翌年の確定申告で税額が確定します。
また、地域の行政サービスを目的とする住民税は、その地域に居住する個人に課される地方税です。都道府県(都民税や県民税)と市区町村(市民税や町民税)を合わせて「(個人)住民税」と言い、所得税と同様、1月1日から12月31日までの1年間の収入をもとに翌年の6月以降に市区町村へ納付します。
住民税の税額計算方法
住民税の税額算出にあたって注意すべきは、「年収」と「所得」の違いです。年収とは、会社員の場合、勤務先から支給される金額であり、社会保険料や税金などを差し引かれる前の金額を言います。
一方、所得は、年収から給与所得控除を差し引いて給与所得金額を算出し、そのあと、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などそれぞれの状況に応じた所得控除を差し引きます。ここで算出された金額が「課税所得金額」と言い、住民税の「所得割」を計算するための元となる金額です。
住民税の課税額は、一律に課税される「均等割」と課税所得によって計算される「所得割」の合計で決まります。税額や税率は、自治体によりますが、おおむね以下のとおりです。
「均等割」…5000円(都道府県1500円+市区町村3500円)
「所得割」…課税所得金額×10%(都道府県4%+市区町村6%)
※1 政令指定都市は、道府県民税2%+市民税が8%
例えば、年収1000万円の会社員の住民税(概算)
参考までに、年収1000万円の会社員の住民税を計算してみました。
前述のとおり、それぞれ個人により適用される所得控除などは異なります。また、給与収入850万円を超える方で一定の扶養親族を有する場合に適用される所得金額調整控除は考慮していません。あくまでも目安を知るための概算です。
年収(1000万円)- 給与所得控除(195万円)= 給与所得(805万円)
給与所得(805万円)- 所得控除(193万円)= 課税所得金額(612万円)
*社会保険料(150万円)+ 基礎控除(43万円)
住民税の額 = 均等割(5000円)+ 所得割(612万円×10%)= 61万7000円(年額)
住民税は年収に対して10%の負担ではないものの、それでも負担は大きい
年金や医療などの社会保障、道路や公共施設などのインフラ整備に税金は不可欠です。とは言え、商品の値上がりは、消費税負担アップにつながり、家計を圧迫します。物価の高騰だけでなく、上がらない賃金をふまえると、理解はしつつも、私たちの生活のなかで負担は増すばかりです。
税率10%と言われる住民税については、年収ではなく、家族構成や生命保険、医療費などの所得控除を差し引いた後の課税所得金額をもとに算出するため、年収1000万円の人は100万円を負担する訳ではありません。ただし、それでも負担は少なくありません。
住民税の負担を抑える手段としては、iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出や大学生(20歳以上)の子の国民年金保険料納付により所得控除(社会保険料控除)の額を増やす、ふるさと納税で税額控除適用などが考えられます。
いずれも資金を捻出する必要がありますが、将来のためであったり、返礼品を受け取るといったメリットも多いのでおすすめです。
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士