年金額が「年400万円」以下なら、確定申告は不要ですか? 不要と思っていましたが、「生命保険料」など還付を受けられる場合もあるのでしょうか?
配信日: 2024.01.29
本記事では、年金暮らしをしている人が確定申告をしないといけないのかどうか、解説します。
執筆者:沢渡こーじ(さわたり こーじ)
公認会計士
年金受給者はそもそも確定申告が必要?
年金受給者は次の2つの条件を満たしているとき、確定申告が不要になります。
(1)公的年金等の収入額が400万円以下であり、かつその全部が源泉徴収の対象となっていること。
(2)公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であること。
つまり、年金の額面金額が年400万円以下で、年金以外の手取額が年20万円以下なら確定申告は不要ということです。年金暮らしの人すべてが確定申告をしなくてよいというわけではないので注意してください。
公的年金等に係る雑所得以外の所得とは?
公的年金等に係る雑所得以外の所得には、主に給与所得、雑所得、配当所得、一時所得があります。それぞれ個別に解説していきます。
給与所得
給与所得には、会社勤めの給与や賞与のほかに、パートやアルバイトで得た収入も含みます。給与の収入金額から給与所得控除を引いた残額が給与所得になります。
雑所得
公的年金等以外の雑所得が該当します。例えば個人年金や、本業ではない人の原稿料やせどり、ブログの広告収入といった副業で得た収入、FXで得た収入といったものが該当し、得られた収入から、その収入を得るのにかかった経費を引いた残額が雑所得になります。
配当所得
株式の配当金や投資信託の収益分配金が該当します。ただし、「上場株式等に係る配当等の申告不要制度」を選択した場合は配当所得から除かれます。
「上場株式等に係る配当等の申告不要制度」は配当金や分配金を受け取るときに、源泉徴収されることで納税を完結する制度で、配当や分配金を別途確定申告する必要がなくなります。
一時所得
生命保険金の満期返戻金や懸賞・福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金などが該当します。得られた収入から、その収入を得るのにかかった経費を引いた額からさらに50万円を引き、その後に2分の1した額が一時所得になります。
あえて確定申告したほうが良い場合は?
控除の対象となる支出があり、その支出が収入額を上回った場合、還付金を受け取れます。控除の対象となる支出は、医療費、社会保険料、小規模企業共済等掛金、生命保険料、地震保険料、ふるさと納税、住宅ローンなどがあります。
控除対象となる支出が年金受取額を上回る場合は、還付を受けるために確定申告をしたほうが良いでしょう。
確定申告はどのようにすればいい?
確定申告のためには「確定申告書」を入手し、必要事項を記載して税務署に提出する必要があります。
確定申告書は税務署や確定申告会場のほか、市区町村の担当窓口や指導相談会場で受け取れます。また、インターネットでも入手できるほか、e-Taxや会計ソフトを利用することで、確定申告書を手書きしなくとも記入が可能です。e-Taxを使ってインターネット上で提出できます。
確定申告のための必要書類として、確定申告書のほかに、年金の源泉徴収票や、マイナンバーカードまたは通知カードと身分証明書、各種控除のための源泉徴収票や医療費通知、保険の支払証明書といった支払を証明するものを用意しましょう。
用意した書類をもとに、自身が得た収入や支払った経費、控除額を確定申告書に記載して、税額を算定します。
初めての確定申告で不安な人は、会計ソフトを利用する、税務署での無料相談を利用する、申告相談会に行くといった方法があります。
まとめ
1月1日から12月31日までの年金の額面収入が400万円以下、年金以外の収入の手取りが20万円以下という両方の条件を満たすと確定申告は不要になります。
ただし、収入よりも控除対象となる支出のほうが多いと還付金を受け取れるため、還付金を受け取りたい場合は、確定申告が不要であっても確定申告をするようにしましょう。
確定申告書のどこに何を記入するのかがわからなかったり、金額の計算に不安があったりする場合は、会計ソフトを利用する、税務署での無料相談を利用する、申告相談会に行くなどをおすすめします。
出典
政府広報オンライン ご存じですか? 年金受給者の確定申告不要制度
国税庁 No.1400 給与所得
国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
国税庁 No.1490 一時所得
国税庁 No.1100 所得控除のあらまし
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士