会社員でも経費を申告できる! 「特定支出控除」を活用して節税しよう
配信日: 2024.03.17
本記事では「特定支出控除」とは何なのか、どのような支出が対象になるのか、簡単に解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
給与所得者の特定支出控除とは?
そもそも「控除」とは、税額を計算する際、個別の事情を加味して金額を調整するための仕組みです。控除の対象になれば、税負担が軽減されます。住宅ローン控除や医療費控除などは有名ですが、他にもいくつもの控除があります。
給与所得者の特定支出控除は、会社員など給与を受け取っている人が一定額を超える「特定支出(仕事に必要な支出)」を行った場合に利用できる控除です。
「特定支出」とは? どんな支出が対象になる?
「特定支出」として認められる可能性があるのは、以下の7種類です。
・通勤費(通勤に必要な交通費など)
・職務上の旅費(出張関連費用など)
・転居費(転勤に伴う転居の費用など)
・資格取得費(仕事に必要な資格を取得するための費用など)
・研修費(仕事に必要な技術や知識を得るための研修の受講料など)
・帰宅旅費(単身赴任中の人が離れた自宅に帰るときの交通費など)
・勤務必要経費(書籍などの図書費、制服や作業服などの衣服費、交際費など)
勤務先が負担した分や給付金が支給された分は除き、自己負担した金額だけが対象です。勤務先もしくはキャリアコンサルタントに、費用を証明する書類を用意してもらう必要があります。
「一定額」とは? いくら以上なら特定支出控除を利用できる?
特定支出控除の対象になるのは、上記の特定支出の合計額が「その年中の給与所得控除の2分の1」を超えた場合です。給与所得控除は、給与所得を受け取っている人が対象になる控除で、収入に応じて図表1のように決められています。
【図表1】
たとえば給与収入400万円の人なら、給与所得控除額は400万円×20%+44万円=124万円、つまり特定支出控除を利用できるのは124万円×2分の1=62万円を超えた場合となります。合計100万円を特定支出として支出したとすると、100万円-62万円=38万円が特定所得控除の対象になる金額です。
転勤による単身赴任や引っ越し、難易度の高い資格の取得やリスキリングなど「今年は仕事関連の出費が多かったな」と感じたときは、特定支出控除の存在を思い出して、総額を計算してみましょう。
特定支出控除を利用するには?
特定支出控除を利用するには、特定支出の金額や税額を計算して確定申告を行う必要があります。
少々手間に感じるかもしれませんが、近年はスマホなどを使った電子申告(e-Tax)も可能で、必要な書類の作成や計算は国税庁の特設ウェブサイトである「確定申告書作成コーナー」でできます。わからないことがある場合は、税務署に問い合わせれば教えてもらえるはずです。
なお、会社員が税金の還付を受ける(払いすぎた税金を取り戻す)ために確定申告を行う場合、通常の確定申告期間は関係ありません。特定支出を行った年の翌年1月以降、5年間いつでも申告できます。
まとめ
スキルアップのための資格取得や単身赴任中の帰宅など、さまざまな支出が「特定支出控除」と認められます。特定支出控除という仕組み自体は昔からありますが、数年おきに改正が行われ、そのたびに対象となる範囲が広がるなど使いやすくなってきています。
控除は自動的に適用されるものではなく、こういった控除があるということを知ったうえで自分から申告した人しか利用できません。知識を付けて、うまく立ち回れるようにしたいですね。
出典
国税庁 令和4年分 確定申告書等作成コーナー 給与所得者の特定支出控除とは
国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.2030 還付申告
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表