更新日: 2024.06.15 控除

今月末で退職します。今年はすでに130万円以上の収入がありますが、来月から夫の健康保険の扶養に入れますか?

今月末で退職します。今年はすでに130万円以上の収入がありますが、来月から夫の健康保険の扶養に入れますか?
子育てをしながらずっと共働きを続けてきたけれど、退職して専業主婦になる決心をした女性から相談を受けました。
 
【A子さんは、45歳の共働き女性です。2人の子育てをしながら会社員として働いてきましたが、仕事を辞める決心をしました。しばらくは専業主婦でいたいと考えています。

これまでは会社の健康保険に加入していましたが、退職した後はどうするのか? 夫も会社員なので、できれば夫の扶養に入りたいけれど、年収130万円以上だと扶養には入れないと聞いて相談にいらっしゃいました。 】
 
本記事では、この相談をもとに社会保険の扶養について見ていきます。
蟹山淳子

執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

退職後の健康保険

A子さんが会社を退職した後に加入する健康保険には、以下の3つの選択肢が考えられます。


・加入していた健康保険の任意継続
・国民健康保険
・夫が加入する健康保険の扶養に入る

(1)任意継続

これまで勤務していた会社の健康保険に、任意継続で加入できます。期間は最長で2年まで。在職中は会社が保険料を半分負担していましたが、自分で全額負担することとなるので、保険料がこれまでの2倍となります。新たに就職したときや、自分で希望すれば途中で脱退できます。
 

(2)国民健康保険

国民健康保険に加入もできます。保険料の計算方法は市区町村によって多少異なりますが、前年1月から12月までの所得をもとに計算されます。そのため、退職した直後の保険料は思いのほか高くなることが多いです。退職した年、翌年、翌々年の保険料を試算して、任意継続の場合と比較してみましょう。
 

(3)夫の健康保険の扶養に入る

会社員である夫の健康保険の扶養に入る、つまり被扶養者(扶養される人)になれば、保険料を負担する必要はありません。国民年金も第3号被保険者になるので、保険料を自分で払わなくても加入できます。
 
これから働く予定がないのであれば、一番メリットの多い選択肢ですが、被扶養者に認定されるには要件を満たす必要があります。
 

健康保険の被扶養者と認定されるには

妻が夫の被扶養者として認定される主な要件は、妻の年間収入が130万円未満、かつ夫の年間収入の2分の1未満であることです。
 
A子さんは、今年に入ってからの収入が130万円を超えています。
 
ということは、「今年中は被扶養者として認められない?」と考えてしまいますが、健康保険で扶養の申請をする場合の年間収入の考え方は所得税の場合とは違います。1月から12月の収入ではなく、申請をする時点から1年間の収入見込みによって判断するのです。
 
A子さんは、今のところ退職後に再就職する予定がないので、予想される年間収入はゼロとなります。ですから、退職の翌月から夫の会社の健康保険の扶養に入ることはできると考えられます。ただし、退職後に雇用保険の失業給付を受けようと思う場合は注意が必要です。
 

雇用保険の失業給付

年間収入には、雇用保険の失業給付も入ります。給付額の合計が130万円に達しなくても、日額が3611円(130万円÷360=3611.11)を超えると、給付を受けている間は扶養に入ることができません。A子さんが失業給付を受ける場合、日額は3611円を超えます。
 
A子さんが退職後すぐに、夫の健康保険の扶養に入るケースを考えてみましょう。自己都合による退職の場合、失業給付の手続きをしても、給付を受けるまでには基本的に2ヶ月余りの待機期間があるので、その間は被扶養者になることができます。
 
しかし、給付が始まったら扶養から外れる手続きをしなければなりません。その時点から元の健康保険の任意継続はできないので、国民健康保険に加入することになるでしょう。そして、失業給付が終わってから再度、扶養の申請をすることになります。
 
数ヶ月の間に扶養に入ったり外れたりすることが予想される場合は、取りあえず退職後には加入していた健康保険に任意継続で加入し、失業給付期間終了後に任意継続をやめて、夫の健康保険の扶養に入るという選択もよいのではないでしょうか。
 

まとめ

A子さんは、雇用保険の失業給付を申請するつもりです。そこで、任意継続した場合と国民健康保険に加入した場合の保険料を試算し、必要となる手続きも考慮して話し合った結果、退職後は健康保険の任意継続を選択することにしました。失業給付期間が終わった後に夫の健康保険の扶養に入るよう申請する予定です。
 
気をつけておきたいのは、健康保険は任意継続できても、公的年金には任意継続の制度がないことです。退職直後から夫の健康保険の扶養に入るまでの期間は国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納める必要があります。退職後は早めに手続きをすることも、併せてアドバイスさせていただきました。
 

出典

全国健康保険協会 協会けんぽ 被扶養者とは?
厚生労働省 ハローワークインターネットサービス 雇用保険の具体的な手続き
 
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集