家計の負担が大きく増えています。会社員でもできる節税策を教えてください(第1回目)
配信日: 2024.06.26
会社員は、税金の手続きは会社に任せているので、税金に対する意識が低いと思われます。
しかし、税金の課税の仕組みには節税のヒントがありますので、会社任せにせず、課税の仕組みを知り、節税に役立て、手取り額を増やしましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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所得税の課税の仕組み
所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。税額の計算方法は、1年間のすべての所得金額から所得控除額を差し引いた残りの金額(課税所得金額)に税率を適用します。なお、実際に納付する金額は、この税額から住宅ローン控除などの税額控除額を差し引いた金額になります。
所得は、その性質によって10種類定められています。それぞれの所得は、収入から必要経費を差し引いて求めます。
例えば、会社員の場合、給与所得金額は、給与収入から給与所得控除額を差し引いて求めます。そして、この給与所得金額から所得控除を差し引いた課税所得金額に所得税率を掛けて所得税額を算出します。
所得控除とは、控除の対象となる扶養親族が何人いるか、また病気にかかった、災害にあったなどの個人的事情を加味して税負担を調整するもので、次の15種類があります。
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
このような所得税の計算の仕組みから、節税するためのポイントは、所得控除と税額控除を漏れなく計上することが分かります。本記事では、工夫しだいで増額できる主な所得控除について見てみます。
ポイントは「扶養親族」「同一生計」
所得控除のなかには、自分だけではなく家族の分も控除できるものがあります。
例えば、医療費控除は「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために1年間に支払った医療費」、社会保険料控除は「納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った」場合も控除できます。
また、例えば、障害者控除は「同一生計配偶者または扶養親族が障害者のときは」とあるように、障害者である親族を扶養している方も障害者控除を受けられます。
「生計を一にする」とは
「生計を一にする」とは、国税庁のホームページ「同居していない母親の医療費を子供が負担した場合」によると、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうのでなく、次のような場合をいいます。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上、他の親族と日常の起居をともにしていない親族がいる場合であっても、次に挙げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居をともにしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居をともにすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
例えば、母親の年収が少額で、子どもからの仕送りで生活しているというような状況、親から仕送りを受けている大学生、老人ホームの療養費を支払っている場合は「生計を一にする」といえます。
扶養親族とは
扶養親族とは、国税庁のホームページ「No.1180 扶養控除」によると、その年の12月31日時点で、次の4つの要件がすべて当てはまる人をいいます。
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます)
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること
具体的には、給与のみの場合は給与収入が103万円以下、年金収入(65歳以上)のみの場合は年金収入158万円以下が該当します。
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
活用例
本項では、各控除の活用例を見ていきましょう。「同一生計」「扶養親族」の条件は、満たしていることを前提とします。
(1) 医療費控除
介護保険施設に入所している親の施設サービスの対価を子どもが支払う。見落としがちな医療費として介護保険施設での費用があります。
特別養護老人ホームの場合は、施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象となります。
介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院の場合は、施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となりますので、知っておきましょう。
(2) 社会保険料控除
下宿している大学生の国民年金保険料を所得の高い親が納付する。
(3)障害者控除
要介護の親を扶養控除と合わせて子どもが控除を受ける。意外に知られていないのが、障害者手帳を持っていなくとも、要介護認定を受けている方は市区町村の判断で障害者控除を受けられるという点です。
認定基準は市区町村によって異なりますが、練馬区の場合は「身体障害者手帳や愛の手帳をお持ちでない場合でも、練馬区に住民票のある65歳以上の方で、介護保険の要介護1~5(相当の方を含む)に該当し総合福祉事務所から『障害者控除対象者認定書』の交付を受けた方は、障害者控除の申告ができます」となっています。
(4)扶養控除
妻の親(3親等内の姻族)を扶養に入れ、所得の高い夫が控除を受ける。
会社員の方でも家庭環境により節税できるかもしれませんので、ぜひ確認してみましょう。
出典
国税庁 所得税のしくみ
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1130 社会保険料控除
国税庁 No.1160 障害者控除
国税庁 同居していない母親の医療費を子供が負担した場合
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
練馬区 住民税・所得税の障害者控除
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。