更新日: 2024.07.15 確定申告

会社員の夫は、がんで昨年12月中旬から本年1月中旬に入院していました。がん保険の請求をする予定ですが、医療費控除の確定申告はどのようにしたら良いでしょうか? 医療費は前年と本年に分けて支払いました

会社員の夫は、がんで昨年12月中旬から本年1月中旬に入院していました。がん保険の請求をする予定ですが、医療費控除の確定申告はどのようにしたら良いでしょうか? 医療費は前年と本年に分けて支払いました
高額な医療費がかかった場合、支払いも大変です。1年間に支払った医療費の合計が原則10万円を超える場合には、確定申告により税金の還付を受けることができます。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

医療費控除の概要

その年の1月1日から12月31日までの間に、自分や「生計を一にする」家族の医療費を支払った場合、その支払った医療費からそれを補填する保険金等を差し引いた金額が原則10万円を超えるときは、超えた分を所得から控除できます。これを医療費控除といいます。
 
医療費控除の対象となる費用は幅広いです。病気やケガの治療目的であれば、保険のきかない一部の自由診療や先進医療の技術料、通院のための交通費、市販の薬、介護費用の一部も控除できます。
 
なお、通院の交通費でもマイカーを使ったものは認められません。また、薬局で購入した薬でも健康増進を目的としたビタミン剤やサプリメントの購入は認められません。
 
また、医療機関に支払った費用がすべて医療費控除の対象になるわけではありません。たとえば、美容や健康増進を目的とした医療や病気の予防を目的とした健康診断などの費用、差額ベッド代等生活面の支出は対象外です。
 
医療費控除の対象になるかどうか、判断に迷った場合は税務署に問い合わせると良いでしょう。
 

医療費控除額の計算

自分や「生計を一にする」家族のために、1年間に支払った医療費からそれを補填する保険金等の金額を差し引いた金額が、10万円(所得が200万円未満の方は所得の5%)を超えた金額を控除できます(上限は200万円)です。
 
「生計を一」にする家族であれば、加入している医療保険の種類に関係なく、全員分を合計できます。家族の中で最も所得税率の高いほうが医療費控除を受けるのが得策です。

・計算式
医療費控除の金額= (実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円(所得が200万円未満の方は所得の5%)

傷病手当金、出産手当金、育児休業給付金、埋葬費、葬祭費、がん保険の診断給付金などは、保険金などで補填される金額に該当しないので、医療費から差し引く必要はありません。
 

医療費の対象となる期間が年末年始をまたぐ場合

医療費控除の控除年分の判定は現金主義で行います(所得税基本通達73-2)。つまり、未払いとなっている医療費は現実に支払われるまでは控除の対象となりません。
 
したがって、たとえば、令和6年末に支払った医療費は令和6年分の、令和7年1月に支払った医療費は令和7年分の所得税における医療費控除の対象となります。
 

医療費を補填する保険金等

医療費控除の計算にあたって、医療費を補填する保険金の額が、医療費を支払った年の確定申告書を提出する時までに確定していない場合には、補填される保険金等の見込額に基づいて計算します。
 
そして、後日、当該保険金等の確定額と当該見込額と異なる場合は、さかのぼってその年の医療費控除額を訂正します(所得税基本通達73-10)。
 
また、医療費が年をまたぐ場合は、保険金等を支払った医療費の額に応じて各年分に按分します。たとえば、令和6年末に支払った医療費が60万円、令和7年1月に支払った医療費が40万円、保険金(見込額)が30万円とすると、令和6年分の医療費控除の計算上、補填される保険金額は18万円、令和7年分については12万円です。
 
なお、がん保険の診断給付金は医療費を補填する保険金の額に含まれません。年をまたぐかたちで医療費を支払った場合は、確定申告時に注意しましょう。
 

出典

国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 法第73条《医療費控除》関係
所得税基本通達73-2 (支払った医療費の意義)
所得税基本通達73-10 (医療費を補填する保険金等の見込控除)

 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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