更新日: 2024.08.19 控除
インフルエンザの予防接種を受けました。予防接種の費用は「セルフメディケーション税制」で所得控除できますか?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
目次
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制とは、健康の保持増進および疾病の予防として一定の取り組みを行っている方が、平成29年1月1日~令和8年12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者、その他親族の特定の一般用医薬品等購入費を支払った場合、その合計額が1万2000円を超えるときは、確定申告で、超えた部分(最高8万8000円)をその年分の総所得金額等から控除できる税制です。
控除額=1年間に支払った特定一般用医薬品などの購入費-保険金などで補填される金額-1.2万円
この税制は、医療費控除の特例(令和8年12月購入分までの特例)であり、従来からある医療費控除との選択適用になりますので、併用はできません。選択した控除は、更生の請求や修正申告において変更はできませんので注意しましょう。
同一世帯で、医療費控除によって申告する人と、この税制により申告する人がいる場合は、それぞれの方が所得控除を申告できます。
セルフメディケーション税制は誰が利用できるのか
セルフメディケーション税制は、だれでも利用できるわけではありません。健康の保持増進および疾病の予防として、一定の取り組みを行う納税者本人が対象です。
「一定の取り組み」とは、具体的には、次の取組が該当します。
(1) 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施している健康診査 【人間ドック、各種健(検)診等】
(2) 市区町村が健康増進事業として行う健康診査 【歯周疾患検診、骨粗しょう症検診、肝炎ウイルス検診、生活保護受給者等を対象とする健康診査】
(3) 予防接種 【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
(4) 勤務先で実施している定期健康診断 【事業主検診】
(5) 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
(6) 市町村が健康増進事業として実施するがん検診
なお、市町村が自治体の予算により住民サービスとして実施している健康診査は対象外です。任意で受けた健康診査も対象になりません。
これらのうち、いずれか1つを受けていればよいため、すべてを受ける必要はありません。
セルフメディケーション税制の控除対象は、特定一般用医薬品等購入費
特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医療用医薬品のうち、薬局・ドラッグストアで購入できるOTC 医薬品に転用された医薬品(いわゆるスイッチ OTC 医薬品)の購入費です。
この税制の対象となる OTC 医薬品については、その医薬品のパッケージに共通識別マークが掲載されています。また、薬局・ドラッグストアにおいて、税制対象医薬品についてはレシート(領収書)に税制対象医薬品である旨が表示されていますので確認できます。
セルフメディケーション税制を受けるための手続き
セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、「セルフメディケーション税制の明細書」を確定申告書に添付する必要があります。医薬品購入費の領収証の添付・提示は不要です。
ただし、「セルフメディケーション税制の明細書」の記入内容を証明するため対象医薬品を購入した際の領収書、および一定の取り組みを行ったことを明らかにする書類は、自宅で5年間保管する必要があります。
証明書類に商品名、金額、当該商品がセルフメディケーション税制対象商品である旨、販売店名、購入日が明記されているか確認しましょう。
まとめ
健康診査や予防接種を受けた人が対象ですので、多くの方が利用できます。自分や家族のために1年間(1月~12月)にスイッチ OTC 医薬品の購入に支払った金額が1万2000円を超えた場合に、確定申告することで所得税・住民税の負担が軽減されます。
ただし、控除できる金額の上限は8万8000円です。ただし、取り組みに要した予防接種などの費用は控除対象となりません。従来からある医療費控除とは選択制になりますので、よく確認しましょう。
出典
厚生労働省 セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー