更新日: 2024.08.20 控除
親に「扶養から抜けるな」と言われている大学生です。友人は「年120万円」稼いでいて、親から何も言われないそうです……扶養から抜けると何がいけないのですか?
そこで、扶養から抜けると何が問題なのか、考えてみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
親が「扶養から抜けるな」と言う理由
親が「扶養から抜けるな」と言うのには、いくつか理由があります。その理由として最も大きいであろうものに、税金の問題があります。年間の給与収入が103万円を超えると、その人は「扶養親族」から抜けてしまうのです。
扶養親族とは、扶養控除の対象となる親族のことをいいます。配偶者以外の親族であることや納税者と生計を一にしていることなどの要件がありますが、その中に所得要件も含まれており、給与所得だけの場合は、給与収入が103万円以下である必要があります。
扶養親族のうち、その年の12月31日時点の年齢が16歳以上の「控除対象扶養親族」に該当すると、年齢や同居の有無などにより異なりますが、所得税の場合、扶養する方は38万円~63万円の控除を受けることができます。
「控除」とは収入のうち、課税対象となる部分を減らすことができるものです。逆にいうと、控除対象の扶養親族が減ることで、その分税金が上がるというわけです。
大学生の場合、留年などしていない限り、一般的には「特定扶養親族(その年の12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族)」に該当します。国税庁によれば、特定扶養親族は控除の額が63万円となります。つまり、課税対象となる金額が63万円も少なくなるわけです。
言い換えると、「大学生の子どもが103万円を超えて稼ぎ、親の扶養から抜けることで、親の税金は収入63万円分増えてしまう」というわけです。
なお、住民税の場合、特定扶養親族の扶養控除額は45万円となります。
仮に扶養から抜けると、どれくらいの額の税金が増えるのか
大学生の子どもが親の扶養に入っているからといって、控除分と同じ額だけ税金が安くなる、というわけではありません。税金は、課税対象となる金額に対して、その金額に応じた税率でかかります。
仮に、年収450万円の世帯において、親の所得税率が5%と仮定しましょう。その場合、63万円の扶養控除があるとないとでは、単純計算で、税金の額に年間3万1500円もの差が出ることになります。
なお、住民税所得割の税率は、収入や所得に関係なく、10%になります。上記の事例で計算してみると、子どもが扶養から抜けることで、親の税負担は単純計算で年間4万5000円増えることになります。
友人はなぜ120万円稼いでいて、親から何も言われないのか?
正直なところ、今回のケースのような「大学生が年収120万円を稼ぎ、扶養から外れても親から何も言われていない」という状況の背景は、一概には言い切れず、さまざまなものが考えられます。
ひとつの理由としては、「子どもが扶養を抜けることで増える税金以上のものを、親が重視しているから」ということが考えられます。具体的には、「アルバイトで学生時代に得られるものはお金だけではなく、社会に出る前の学びである」と考えた親が、自身の税金とてんびんにかけ、許可している場合もあります。
例えば、年収450万円前後の世帯であれば、大学生の子どもが扶養から外れても、前述した条件では単純計算で、親の税負担は年間7万6500円程度であり、月々6000円少々です。
また、友人が増えた金額分を親に渡していて、税負担が実質的に増えていないため、許可されている可能性もあるでしょう。さらに、場合によっては「友人の親が税金について気にしていない」という可能性もあります。
まとめ
親が「扶養から抜けるな」と言うのは、税負担の問題があるからだと考えられます。親の収入などにもよりますが、大学生の子どもが扶養から外れることで、年間7万円以上の税負担が増えることもあるでしょう。
とはいえ、全ての世帯がその税負担を重視しているわけではなく、世帯によってはアルバイトを通じて子どもが社会を学ぶことなどを重視して、扶養から外れることを許可している、あるいは本人の裁量に任せている可能性もあります。
いずれにせよ、アルバイトの収入については、子どもだけでなく親も関係してくる事柄です。きちんと親と子どもが話し合って、どうしていくか決めていくべきでしょう。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 専門用語集 「扶養親族」、「控除対象扶養親族」、「特定扶養親族」
執筆者:柘植輝
行政書士