更新日: 2024.10.24 控除
去年結婚し最近妊娠がわかりました。税金に関する知識があまりないので、出産費用はどこまで医療費控除の対象なるのか教えてほしいです
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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医療費控除
医療費控除とは1月1日から12月31日までの1年間に、自分や「生計を一にする」家族の医療費を支払った場合に、その支払った医療費が10万円(所得が200万円未満の方は所得の5%)を超えるときは、超えた分を確定申告で所得控除できる制度です。
10万円を超えた部分に税率を掛けた分だけ税金が少なくなります。たとえば、医療費が合計50万円かかった場合、40万円を所得から控除できます。所得税率が10%の方であれば、所得税4万円、住民税4万円の節税になります。
「生計を一」にする家族であれば、加入している医療保険の種類に関係なく、全員分を合計できます。家族の中で最も所得税率の高い方が医療費控除を受けるのが得策です。
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
医療費控除の金額= (実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円(所得が200万円未満の方は所得の5%)
保険金などで補填される金額とは、生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費、家族療養費、出産育児一時金や家族出産育児一時金などです。これらは、医療費控除の額を計算する際に医療費から差し引きますので注意しましょう。
一方、出産の前後の一定期間勤務できないときに健康保険などから給付される出産手当金は、医療費を補てんする性格のものではなく、給与を補てんするものなので、医療費控除の計算上差し引く必要はありません。
医療費控除の対象となる出産に伴う費用
医療費控除の対象となる出産に伴う費用のうち、主なものを見てみましょう。妊娠と診断されてからの出産までの定期検診や検査費用、入院費、通院費用は医療費控除の対象になります。出産後の検診の費用についても、健康診断の対価にすぎないものを除き、医療費控除の対象です。
タクシー代は原則対象外ですが、出産で入院する際に、電車、バスなどの通常の交通手段によることが困難なためにタクシーを利用した場合、そのタクシー代は医療費控除の対象となり得ます。
病院に対して支払う入院中の食事代は、入院代に含まれますので、一般的には医療費控除の対象になります。
医療費控除の対象とならない出産に伴う費用
妊婦に対して行う母体血を用いた出生前遺伝学的検査は、胎児の染色体の数的異常を調べるものであって、診断の一種であり、また、本件検査を行った結果、染色体の数的異常が発見されたとしても、それが治療につながらないので医療費控除の対象となりません。
実家で出産するために実家に帰省する際の交通費も、医療費控除の対象にはなりません。マタニティードレス、腹帯、妊婦用下着、寝間着、洗面具など身のまわり品を購入した費用も医療費控除の対象外です。
また、本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金も、医療費控除の対象になりません。医師や看護師に対するお礼は、診療などの対価ではありませんので、医療費控除の対象ではありません。入院中食事でも他から出前を取ったり外食したりしたものは、控除の対象外です。
まとめ
出産した年は医療費控除を受ける可能性が高いので、家族の分も含め領収書はしっかり保管し確定申告を忘れずに行いましょう。判断に迷ったら税務署に確認してください。
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
国税庁 母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用
国税庁 妊婦の定期検診のための費用
国税庁 お産のために実家へ帰る旅費
国税庁 No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー