更新日: 2019.07.03 控除

消費税率引き上げによる施策「住宅ローン控除の特例創設」ってなに

消費税率引き上げによる施策「住宅ローン控除の特例創設」ってなに
昨年の12月21日に、平成31年度税制改正大綱が閣議決定されました。その内容は多岐にわたりますが、本稿では、10月の消費税率引上げによる需要変動を平準化させるための施策として掲げられた「住宅ローン控除の特例創設」についてご紹介します。
 
星田直太

執筆者:星田直太(ほしだ なおた)

税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))

一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。

税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。

中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。

「住宅ローン控除」とは

正しくは、「住宅借入金等特別控除」といいます。これは、個人が自宅の新築や購入、増改築などを行う際に住宅ローンを利用した場合に、一定の要件のもとで、所得税の減額をするものです。
 
現行制度(改正前)について、主な要件等を詳しく見ていきましょう。
 
・新築や取得の日から6か月以内にその自宅への居住を始め、住宅ローン控除の適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて居住している
・住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が3千万円以下
・対象となる住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が専ら自らの居住用とされている
・10年以上にわたり分割返済する一定の借入金がある
・居住を始めた年を中心とした前後5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例など一定の規定の適用を受けていない

 
なお、床面積は登記簿上の面積によります。特に、マンション等の区分所有建物の場合は内法面積になりますので、壁芯面積よりも小さくなることに注意が必要です。
 
■適用期間
現行法では、2021年12月31日までに取得等した自宅への居住を始めた場合に、住宅ローン控除の適用があります。
 
■所得税額から控除される金額
住宅ローン控除によって所得税額から控除される金額の計算は、現在では「住宅ローン年末残高の合計額×1%(計算結果の100円未満は切捨て)」で、10年間にわたり控除を受けることができます。
 
なお、「住宅ローン等年末残高の合計額」が物件取得のための対価等よりも大きい場合は、その対価等の額が計算の基礎になります。
 

住宅ローン控除の特例の内容

さて、ここからが平成31年度税制改正大綱による特例創設の内容です。ただし、正確な内容は今後の法制化を待つ必要があることにご留意ください。
 
■特例による適用対象期間
消費税率引上げによる需要変動平準化のため、現行法の住宅ローン控除制度に加えて、特例制度が創設されます。
 
この特例は、2019年10月1日から2020年12月31日までに居住の用に供した場合に適用があるとされます。消費税率引上げの開始時期から1年強の期間の間になりますので、期間は限定的といえます。
 
■対象となる住宅の取得等
消費税率10%となる住宅の取得等をした場合に限られます。前述の対象期間に居住を開始したとしても、経過措置によって消費税率8%の条件で住宅の取得等をした場合は、特例の適用はありません。
 
■控除対象期間
所得税額からの控除を行う期間は、現行法では10年間です。特例では、これが13年間に延長されます。
 
■所得税額から控除される金額
延長期間にあたる最後の3年間(11年目~13年目)は、次の(1)か(2)のいずれか少ない金額を所得税額から控除することになります(一般住宅の場合)。1年目から10年目までは、現行法と同じです。
 
(1)住宅ローン等年末残高(4千万円まで)×1%
(2)(住宅取得等対価の額-対価に含まれる消費税額等)×2%÷3
 
この(2)の計算は、税率引上げによる差異2%分について、控除延長期間3年で等分に控除を受けるといった仕組みです。なお、「住宅ローン年末残高の合計額」が物件取得のための対価等よりも大きい場合は、その対価等の額が計算の基礎になることは、現行法と同様と考えられます。
 

適用初年度は確定申告が必要

住宅ローン控除は、その適用初年度は年末調整によることができず、確定申告が必要になります。2年目以降は年末調整によって控除を受けることができますが、特例措置を受ける場合は、11年目以降の控除額計算が変わる可能性があり、事務処理が混乱する可能性があります。
 
今から注意をしておくことはなかなか難しいとは思いますが、適用を受ける方と企業の経理担当の方のいずれも、改正内容を理解しておく必要があるでしょう。
 
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
 

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