更新日: 2023.08.15 確定申告

脱サラした個人事業主が、確定申告で得する方法とは?

執筆者 : 堀江佳久

脱サラした個人事業主が、確定申告で得する方法とは?
2018年のフリーランス白書によると、日本には1000万人余りのフリーランス(副業・兼業を含む)がいると言われています。
 
2017年の日本の労働力人口は6570万人と発表(総務省統計局 労働力調査2017年)されていますので、フリーランスは、国内労働力人口の約6分の1にあたります。また、経済規模にすると20.1兆円になるという試算もあるようです。
 
米国では、約3分の1がフリーランス化しており、2027年には過半数になると言われています。日本においても、クラウドソーシングの普及があり、フリーランスになる人たちがさらに増えていきそうです。
 
今回は、サラリーマンを辞めて、こういったフリーランスなどの個人事業主になった場合に行う確定申告の基本を確認し、少しでも税制面などで得する方法について紹介します。
 
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

白色申告と青色申告の違いを認識する

■個人事業主の確定申告

サラリーマンを辞めて個人事業主となった場合には、今まで確定申告をしていた人は除いて、多くの人は確定申告をする必要があります。確定申告には、白色申告と、青色申告があり、どちらかを選ぶことになります。
 
白色申告は、会計帳簿の作成を簡単にすませることができますが、税制上の特典はありません。一方、青色申告は、厳密な会計帳簿を作成する必要はありますが、税制面の特典を受けることができます。
 
したがって、手間はかかりますが、メリットのある青色申告を選択するほうが良いでしょう。なお、青色申告をする場合には、前年の3月15日までに、新規開業の場合は開業日から2ヶ月以内に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要がありますので、注意してください。
 

■青色申告の主な特典

(1)青色事業専従者給与
申告者と生計を一にする親族で、もっぱらその事業に従事している者に対して給与を払う旨を所轄の税務署長に届け出た場合は、その親族が働いた給与を必要経費とすることができます。この生計一にする親族に対して支払う給与を「青色事業専従者給与」と言います。
 
(2)純損失の繰り越し控除・繰り戻し還付
その年の所得金額計算において、損益通算をしてもなお相殺できない損失が生じたときは、純損失の金額として翌年以降3年間にわたって繰り越すことができ、各年分の所得から控除することができます。
 
また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰り越しのかわりに、その損失額を、生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
 
(3)青色申告特別控除
確定申告書に、正規の簿記の原則にしたがった帳簿書類にもとづき作成した貸借対照表や損益計算書などの明細を添付し、提出期限までに提出するなど、必要要件を満たした場合には、65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。
 
上記のほか、貸倒引当金があった場合、その金額を必要経費として認めるなどの特典があります。
 

税制改正による青色申告特別控除の引き下げを回避するには

■青色申告特別控除の引き下げ

2018年度の税制改正により、正規の簿記の原則に従って記帳している人が受けられた青色申告特別控除の控除額が、65万円から55万円に引き下げられることになりました。2020年分の所得税(個人住民税は2021年度分)から適用されます。
 
ただし、簡易簿記や現金主義による、控除額10万円の青色申告特別控除についての改正はありません。
 

■引き下げを回避するには

正規の簿記の原則に従って記帳している人で、電子申告などの下記要件を満たす場合には、青色申告特別控除額は65万円のままになりますので、ぜひ、電子申告や電子帳簿保存を行いましょう。
 

【電子申告などの要件】

下記の(1)または、(2)のいずれかに該当すること。
(1)電子帳簿保存
一定の要件の下で帳簿を電子データのままで保存できる制度。その年分の事業に係る仕訳帳や総勘定元帳について、税務署長の承認を受けて、電磁的記録の備え付けおよび保管を行っていることが必要。
 
この制度の適用を受けるには、帳簿の備え付けを開始する日の3ヶ月前の日までに申請書を税務署に提出する必要がある。
※ 原則として課税期間の途中から適用することはできない(2020年分に限った特例あり)。
 
(2)電子申告(e-Tax による申告)
その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書などの提出を、その提出期限までにe-Taxを使用して行うこと。
※e-Tax とは、申告などの国税に関する各種の手続きについて、インターネットを利用して電子的に手続きが行えるシステム。
※「利用するパソコンがe-Taxの推奨環境を満たしているのか」「申請時に必要なもの」などを、事前にe-Taxホームページでご確認ください。
 
出典
厚生労働省 プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書 2018
国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度
国税庁 青色申告特別控除額 が変わります!!
国税庁 e-Taxホームページ
 
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
 

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