「インプラントは医療費控除できます! 」というチラシを見ました。領収書を取っておけば、すべての治療を医療費控除できるのでしょうか?
配信日: 2025.02.23


執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
インプラント治療は全額控除対象というわけではない
インプラント治療は高額になりやすいので、医療費控除の活用はとても重要です。結論からいうと、インプラント治療は医療費控除の対象になりますが、すべての治療費が認められるわけではありません。
医療費控除の基本を確認
医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費のうち、10万円または所得の5%を超えた部分 が控除の対象です。計算式で確認しましょう。
(年間の医療費総額 − 保険金などの補填額 − 10万円)= 控除対象額
※ 所得200万円未満の場合は、10万円ではなく所得の5%を超えた部分が控除対象。
確認ポイントは以下の2点です。
1.「インプラント治療を含めた」1年間の医療費が10万円を超える場合にのみ、医療費控除が適用される ということです。
2.インプラントは、『病気やケガの治療』として必要と認められる場合、医療費控除の対象になりますが、美容目的や高級な材料を使用した治療の場合は、控除の対象外となることがあります。
具体的には以下の表1のようになります。
【表1】
例えば、『白くて美しい見た目のために、セラミック製のインプラントを選んだ場合、その差額部分は控除対象にならない』 ということになります。
歯科医院への交通費も医療費控除可能
通院にかかった交通費も医療費控除の対象になります。
・ 公共交通機関(電車・バス・タクシー)を利用した場合のみ対象
・ 自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外
・ タクシーは『緊急時』や『公共交通機関が使えない場合』のみ対象
・ 領収書がない場合は、日付・ルート・金額を記録しておく
例えば、手術後の通院で電車やバスを利用した場合、その運賃は医療費控除の対象です。一方、自家用車で通院した際のガソリン代や駐車場代は対象外です。
まとめ
インプラント治療の医療費控除について内容を整理します。手順を踏んで、医療費控除を正しく活用して負担軽減に役立ててください。
(1) 基本的に控除対象にはなりますが、美容目的や高級素材の差額は対象外です。治療費が控除対象か確認し、領収書や診療明細書を保管しておきましょう。
(2) 公共交通機関を利用した通院交通費は控除対象です。交通費メモを記録しておきましょう。
(3) 1年間の医療費を計算し、10万円を超えたら控除を検討しましょう。
出典
国税庁 令和6年分 確定申告特集 医療費控除を受ける方へ
国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者