会社に副業がバレたくない!住民税でバレると聞きましたが防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
配信日: 2025.03.26

本記事では給与所得者(会社員)が副業を行う場合に、税務面で注意すべきポイントを整理して説明します。

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
副業の所得区分と申告の必要性
1 副業の所得区分
1-1雑所得と見なされるケース
副業の内容が趣味的・継続性がないものや、本業と比べて規模が小さい場合は「雑所得」に分類されることが多いです。
例えば、ハンドメイド作品の売買、フリマアプリ等での不定期な販売利益、ブログやSNSを通じた広告収入などが該当します。雑所得の場合は、以下に述べるとおり「雑所得が20万円を超えるか否か」で、確定申告を行う義務が生じるかどうかを判断します。
1-1-1. 副業収入が20万円を超えるかどうか
(1)年間の副業収入(雑所得)が20万円以下
給与所得が1ヶ所のみで、年間の副業収入が20万円以下の場合は、原則として確定申告を省略できます。ただし住民税の申告は必要となる場合があるため、自治体のルールに従い、市区町村役場での手続きを行います。
(2)年間の副業収入(雑所得)が20万円超
給与とは別に20万円を超える所得がある場合は、必ず確定申告を行わなければなりません。確定申告をしないと、追徴課税や延滞税等のペナルティーを科される可能性があります。
1-2事業所得と見なされるケース
副業の規模が大きく、営利性・継続性・独立性が認められる場合は「事業所得」として扱われることがあります。例えば、フリーランスとしてプログラミングやデザイン業務を継続的に受注し、明確な事業基盤がある場合が該当します。事業所得の場合は、確定申告をする必要があります。
年末調整と副業の関係
給与所得者の税金は、毎月の給与から源泉徴収され、年末に会社がまとめて精算(年末調整)します。年末調整はあくまで「給与所得」についてのみ行われるもので、他の所得(副業収入)がある場合は自分で確定申告が必要になるケースがあります。
給与以外の所得を会社に報告したくない場合は、一般的に、年末調整の段階で会社に副業の収入を申告する必要はありません。ただし、会社からの住民税の天引き(特別徴収)を続けたい場合、会社の経理担当者が住民税額の急増を不自然に感じることはあります。
副業を知られたくない場合、住民税の「給与・公的年金以外の所得に係る住民税の徴収方法」の項目で「普通徴収」を選ぶことで、会社に副業収入が伝わりにくくなります。
必要経費と所得計算
必要経費は、事業所得でも、雑所得でも認められます。ただし、損益通算や青色申告の適用可否に違いがあります。
(1) 雑所得の場合の必要経費
副業で得た収入から、該当する「必要経費」を差し引いた金額が「雑所得」となります。必要経費は、副業収入を得るために直接かかった費用(材料費、通信費、広告宣伝費など)に限られます。
(2) 事業所得の場合の必要経費
副業が事業として認められた場合、必要経費の範囲が比較的広く認められることがあります(家賃や光熱費の一部、専従者給与など)。ただし、事業所得として扱うためには、帳簿付けや事業としての実態が必要です。
副業を会社に知られたくない場合の住民税対策
1. 普通徴収の選択
先述したように、確定申告書の「住民税の徴収方法」の欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択すると、副業分の住民税は会社を通さず納付できます。これにより、会社に対して副業の住民税が通知されることを避けられます。
ただし、普通徴収を選択しても、給与と合わせた合計所得に基づいて住民税が計算される点は変わりません。
2. 注意点
会社員としての給与分の住民税は、引き続き特別徴収(給与天引き)されることとなるため、副業分の住民税のみが別口で納付されます。
副業で高額な所得が発生すると、会社が天引きしている住民税額と比較して、差が大きくなる可能性はありますが、会社がそれを把握する仕組みにはなっていません。
副業を行う場合の、その他の留意点
1. 勤務規定の確認
会社によっては、副業を制限・禁止しているケースがあります。就業規則を必ず確認し、違反しないようにしましょう。
2. 社会保険の適用
副業収入が増えると、年金や健康保険などの扱いに影響が生じる場合があります。副業で別途社会保険に加入する必要があるかどうか、自分の勤務状況や収入額を確認しておくことが大切です。
3. 青色申告の検討
副業が事業所得として認められる規模の場合、青色申告を検討するのも一案です。青色申告特別控除や赤字繰越などの恩恵を受けられ、また、事業所得で赤字が出た場合は給与所得との損益通算も可能になるなど、節税メリットが高くなる可能性があります。
ただし、複式簿記による帳簿付けや、事前の申請が必要となる点には、注意が必要です。
まとめ
給与所得者が副業を始める際には、年間の副業収入が20万円を超えるかどうか、会社の就業規則の制限、副業による住民税の納付方法など、いくつか重要な注意点があります。
特に、20万円を超える雑所得や事業所得が発生した場合は、必ず確定申告が必要です。また、副業の実態や規模によっては、青色申告を選択することで、大きな節税効果を得られる場合があります。
会社に副業を知られたくない人は、住民税の普通徴収を選ぶなどの方法で対策できます。とはいえ、住民税額の増減など、間接的に知られる可能性を完全にゼロにすることは難しいのが実情です。
いずれにしても、正確な所得計算と適切な申告を行い、トラブルやペナルティーを回避することが重要です。
出典
国税庁 確定申告が必要な方
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
国税庁 No.2210 必要経費の知識
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー