来年4月から始まる「独身税」と呼ばれる「子ども・子育て支援金」。ひとり親も「独身税」を払わなくてはいけないの?
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
子ども・子育て支援金
わが国の少子化対策として、令和5年12月22日に「こども未来戦略」が閣議決定され、「子ども・子育て支援加速化プラン」がとりまとめられました。
令和6年6月12日、施策を着実に実行するため「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」が成立しました。施策にかかる財源の一部として創設されたのが、「子ども・子育て支援金制度」です。
社会全体で子ども・子育てを支援していくため、高齢者や企業を含む全世代・全経済主体が対象となります。支援金の徴収方法は、健康保険や国民健康保険、共済、後期高齢者医療保険等の医療保険料と合わせて、所得に応じて徴収されます。
支援金制度は、令和8年度が約250円、9年度が約350円、10年度が約450円と段階的に構築されていきますが、それまでの間は「子ども・子育て支援特例公債」がつなぎとして発行され、事業に必要な費用に充てられます。
独身税といわれるのはなぜ?
それでは、なぜ、「子ども・子育て支援金制度」が「独身税」といわれるのでしょうか。
医療保険料と合わせて徴収された「子ども・子育て支援金」は、子どもや子育て家庭を応援する以下の事業に充てられます。
・児童手当を抜本的に拡充する
高校生の年代まで延長、所得制限を撤廃、第3子以降の増額(+3万円、令和6年10月より開始)
・妊婦のための支援給付(出産・子育て応援交付金)
妊娠と出産時に10万円の経済支援(令和7年4月から制度化)
・乳児等のための支援給付(こども誰でも通園制度)
月一定時間までの枠内で、時間単位等で通園できる制度の創設(令和8年4月から給付化)
・出生後休業支援給付(育休給付率の手取り10割相当の実現)
子の出生後の一定期間に男女で育休を取得した場合に、育児休業給付とあわせて最大28日間、手取り10割に相当する金額になるよう給付の創設(令和7年4月から)
・育児時短就業給付(育児期の時短勤務の支援)
2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給(令和7年4月から)
・国民年金第1号被保険者の育児期間に保険料を免除
国民年金第1号被保険者(フリーランスや自営業等)について、その人の子どもが1歳になるまでの期間、国民年金保険料を免除(令和8年10月から)
(引用:子ども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」)
子ども・子育て支援金制度から支援を受けられるのは、子育て世帯や妊娠中の方だけです。子どもがいない世帯は、公的医療保険料に加算して強制的に徴収されるだけで、何も支援が受けられないため、取られるだけの税金ではないかと解釈されるのです。
ひとり親の場合、免除される?
ところで、ひとり親家庭は税制優遇を受けられる場合がありますが、「子ども・子育て支援金制度」の負担が免除されることはないのでしょうか。
公的医療保険料を支払っているすべての方が、「子ども・子育て支援金支援金制度」の徴収対象です。よって、ひとり親家庭という理由で免除されるものではありません。
しかし、負担分が免除されなくても、0~18歳までの間の平均的な給付拡充は累計で約146万円となります。負担があっても、それを上回る支援を受けられます。もし、国民健康保険に加入の場合であれば、子どもに係る支援金については、10割軽減の措置がされます。
また、国民健康保険や後期高齢者医療制度は、低所得者に対する軽減措置や、支援金額に一定の限度額が設けられます。
まとめ
「子ども・子育て支援金制度」は、子育てが終了した高齢者もひとり親家庭も含めた社会全体で子育てを支援するものです。子育て世帯以外は負担が増えるだけと思われますが、次世代の支援することは、社会システム、国民皆保険制度の維持の可能性が高くなることにつながり、直接支援を受けない人々にとっても重要な意義があるのではないでしょうか。
出典
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度のQ&A
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度の概要について
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者
