「年140万円稼ぎたい」19歳息子vs「103万円の壁におさえてほしい」親。実は140万円稼いでも親が控除を受けられることがあるって本当?

配信日: 2025.12.16
この記事は約 4 分で読めます。
「年140万円稼ぎたい」19歳息子vs「103万円の壁におさえてほしい」親。実は140万円稼いでも親が控除を受けられることがあるって本当?
子どもが自分でお小遣いを増やすため、できるだけ多く稼ぎたいと考えることもあるでしょう。しかし、親としては税額負担を少しでも軽くするため、「103万円の壁」は超えないでほしいと思う人もいるかもしれません。
 
実は、税制改正により、19歳以上23歳未満の子どもであれば、年収103万円を超えても親が控除を受けられる場合があります。今回は、税制改正により子どもの年収に応じた控除などがどう変わるのかをご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

19歳の子どもは103万円ではなく150万円の壁になる

令和7年度の税制改正前であれば、年収140万円を子どもが稼ぐと「103万円の壁」を超え、扶養控除から外れる仕組みでした。扶養控除が外れると、所得税や住民税にかかる所得額が高くなるため、親などの税額負担が高くなります。
 
しかし、令和7年度の税制改正で創設された「特定親族特別控除」により、19歳以上23歳未満の特定親族に関しては年収の壁が103万円から150万円に引き上げられます。これにより、もし子どもが年収140万円を稼いでも、親は控除を受けられるでしょう。
 
また、年収150万円を超えても、年収188万円までであれば、年収が上がるにつれ控除額は減りますが、控除自体は受けられます。国税庁や調布市によると、子どもの年収ごとの特定親族特別控除の金額は表1の通りです。
 
表1

給与収入のみの場合の年収 特定親族特別控除額(所得税) 特定親族特別控除額(住民税)
123万円超~150万円以下 63万円 45万円
150万円超~155万円以下 61万円
155万円超~160万円以下 51万円
160万円超~165万円以下 41万円
165万円超~170万円以下 31万円
170万円超~175万円以下 21万円
175万円超~180万円以下 11万円
180万円超~185万円以下 6万円
185万円超~188万円以下 3万円

※筆者作成
 
子どもができるだけ多く稼ぎたいと言っているときは、表1の金額も参考にいくらくらいまでなら、家計に大きな影響がないかを計算してみるとよいでしょう。
 

税制改正前後での税額の違い

令和7年度の税制改正前後で、子どもが年収140万円を稼いだ場合の親の税額差を比較してみましょう。親側の前提条件は以下の通りです。
 

・給与所得から社会保険料控除を引いた金額が300万円
・適用される控除は基礎控除、配偶者控除、特定親族特別控除
・子どもは19歳で年収140万円
・配偶者は50代の専業主婦
・住民税は所得割+均等割(森林環境税含む)で10%+5000円とする

 
なお、税制改正により特定親族特別控除が創設されただけでなく、所得税の基礎控除額も48万円だったものが58万円~95万円の間で所得に応じて変わる仕組みに変更されます。
 
これらの条件を基にすると、税制改正前の所得税課税所得は214万円、所得税は11万6500円です。また、住民税課税所得は224万円、住民税は22万9000円になります。
 
一方、税制改正後は特定親族特別控除が適用されるため、所得税課税所得は111万円、所得税は5万5500円です。住民税課税所得は179万円、住民税は18万4000円になります。
 
子どもが年収140万円を稼いだ場合、税制改正前後で比較すると、税額は10万6000円安くなるでしょう。
 

年収140万円になった場合の子ども本人への影響

年収140万円の場合、給与所得控除65万円を差し引くと給与所得は75万円となり、所得税の基礎控除(95万円)以内に収まるため、所得税はかかりません。
 
一方で、住民税の基礎控除は43万円にとどまるため、給与所得75万円から基礎控除を差し引いた32万円が住民税として課税対象になります。
 
また、年収が106万円を超えると社会保険料の対象にもなる可能性があります。課税されたり社会保険に加入したりすることで、想定より手取りが少なくなるケースがある点に留意しておきましょう。
 

税制改正により子どもの年収140万円でも親は控除を受けられる可能性がある

税制改正以前であれば、子どもが年収140万円を稼いでいると、扶養控除の対象外となるため親の税額負担が高くなる仕組みでした。しかし、令和7年度税制改正により、19歳の特定親族で年収140万円であれば特定親族特別控除の対象となり、税額負担が軽くなります。
 
一方で、年収140万円になると子ども本人には住民税が課税され、社会保険への加入が必要となるケースもあります。そのため、子ども本人の手取りが想定より少ないと感じる可能性があります。子どもが多く稼ぎたいと言ったときは、こうした点を伝えておくとよいでしょう。
 

出典

国税庁 令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A 【改正の概要】 1-2 改正の概要(基礎控除)(3ページ)、1-3 改正の概要(給与所得控除)(4ページ)、1-5 改正の概要(特定親族特別控除)(5ページ)
調布市
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問