いつも「手取り32万円」の会社員が、なぜか“住民税14万円”引かれ衝撃! 経理からは「法律ですから」と冷たい返答…春の退職で陥った“住民税一括徴収”の深い罠とは

配信日: 2026.03.14
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いつも「手取り32万円」の会社員が、なぜか“住民税14万円”引かれ衝撃! 経理からは「法律ですから」と冷たい返答…春の退職で陥った“住民税一括徴収”の深い罠とは
春は出会いと別れの季節。「3月末で今の会社を辞めて、4月から心機一転、新しい職場で頑張ろう」と考えている人も多いのではないでしょうか。
 
長年勤めた会社を去る解放感、有休消化期間の旅行計画……しかし、そんなウキウキ気分をどん底に突き落とすのが、退職時に渡される「最後の給与明細」です。
 
「えっ、なんでこんなに少ないの? 計算間違ってない?」
 
経理に問い合わせても返ってくるのは、「法律ですので」という冷徹な一言。今回は、1月~5月に退職する人を狙い撃ちにする「住民税の一括徴収」の恐怖について、42歳男性の実例をもとに解説します。
西村和樹

2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士

いつもより「10万円以上」少ない……給与明細の怪

都内の中堅メーカーで営業職として働くAさん(42歳・独身)。
 
年収は約650万円、月の額面給与は40万円です。手取りにすると月々約32万円(社宅費等の天引き前)。独身ということもあり、生活にはそれなりの余裕がありました。
 
Aさんはキャリアアップのため、長年勤めた会社を2月末で退職し、4月から新しい会社へ転職することを決意。「3月は有休をフルに使って、1ヶ月間パーッと海外旅行でもしよう」と計画し、航空券やホテルの予約も済ませていました。
 
そして迎えた2月25日、現職での最後の給料日。「退職金はまだ先だけど、今月の給与と冬のボーナスの残りで、旅行代は余裕で払えるな」そう思いながらWeb明細を開いたAさんは、わが目を疑いました。
 
振込額の欄に記載されていたのは、見慣れた「32万円」ではなく、なんと「14万円」という数字。普段の半分以下です。家賃やカードの引き落としを考えれば、手元に残るお金はほとんどありません。
 
「なんで!? 欠勤なんてしてないぞ!」
 
慌てて控除(天引き)の欄を確認すると、「住民税」の項目に「14万円」というとんでもない金額が記載されていたのです。
 

原因は「退職時期」にあった

普段、Aさんの給与から引かれている住民税は、月々約3万5000円です。それがなぜ、最後の月だけ4倍の「14万円」にも跳ね上がったのでしょうか。
 
理由は、「住民税の徴収期間」と「退職日」の関係にあります。会社員の住民税は、前年の所得に対する税金を、翌年の「6月から翌々年の5月まで」の12回に分けて給与から天引き(特別徴収)しています。つまり、私たちは常に「後払い」をしている状態なのです。
 
ここで問題になるのが、退職するタイミングです。
 
住民税の天引きルールは、退職月によって以下のように法律で厳格に決められています(図表1)。
 

・6月~12月に退職する場合:最後の月の住民税だけを天引きし、残りの月分は後に自分で納付する(普通徴収)か、一括で天引きするかを退職者が選べる。
 
・1月~5月に退職する場合:原則として、退職月から5月分までの残りの住民税を、会社が最後の給与から「一括で」天引きしなければならない(義務)。

 
Aさんが退職したのは「2月末」。まさにこの「1月~5月退職」のルールが適用される期間でした。
 
そのため、会社側は法律に従い、「2月分・3月分・4月分・5月分」の計4ヶ月分の住民税(3万5000円×4ヶ月=14万円)を、2月の給与からまとめて差し引いたのです。
 

「手取り半減」は回避できないのか?

この「一括徴収」は、地方税法第321条の5によって定められた会社の義務です。
 
本人が「お金がないから自分で払います(普通徴収にしてください)」と頼んでも、会社側は原則として拒否しなければなりません(※最後の給与や退職金の額が住民税額よりも少ない場合を除く)。
 
図表1

退職時期 徴収方法 Aさんの場合(月3万5000円)
6月~12月 1ヶ月分のみ徴収
(残りは普通徴収も可)
3万5000円
1月~5月 5月分までを一括徴収
(義務)
14万円(4ヶ月分)

筆者作成
 
Aさんの場合、4月に入社する次の会社で再び天引き(特別徴収)が始まるのは、早くても5月か6月の給与からです。それまでの空白期間に納め漏れがないよう、国は「辞める時にまとめて払っておけ」という仕組みにしているのです。
 
制度としては合理的かもしれませんが、退職者にとってはたまったものではありません。Aさんは結局、楽しみにしていた海外旅行をキャンセルせざるを得なくなりました。
 
「立つ鳥跡を濁さずと言いますが、まさか財布の中身まできれいに掃除されるとは思いませんでした……」Aさんは力なく笑います。
 

退職前の「明細チェック」が命取りを防ぐ

これから3月末にかけて退職を予定している人は、今のうちに「自分の住民税が月いくらか」を確認し、退職月から5月までの月数分を掛け算してみてください。もし3月末退職なら、「3月・4月・5月」の3ヶ月分が最後の給与からごっそり引かれます。
 
「最後の給料は多いはず」とあてにしてカードを使ったり、大きな買い物をしたりするのは危険です。
 
住民税の一括徴収は、新しい生活を始める私たちの出はなをくじく、恐ろしい「春のトラップ」といえます。知っておくことで、少なくとも心の準備と資金の確保だけはできるのではないでしょうか。
 

出典

東京都主税局 個人住民税(区市町村民税・都民税)特別徴収の事務手引き
e-Gov法令検索 地方税法
 
執筆者 : 西村和樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士

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