夫の定年後、わが家は住民税非課税世帯になると思っていましたが、年金や退職金によっては対象外になることもあるのでしょうか? 要件を教えてください!
住民税非課税世帯に認定されるかどうかは、老後の医療費や各種給付の負担額に影響する重要なポイントです。本記事では、定年間近のご夫婦に向けて、住民税非課税世帯の要件と、年金や退職金がどのように影響するかを解説します。
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
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人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
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目次
住民税非課税世帯とは? 基本の仕組みとメリット
定年後の家計を大きく左右する「住民税非課税世帯」ですが、まずはその基本的な定義と、該当した場合に得られる具体的なメリットについて整理します。
世帯全員の住民税が「均等割」「所得割」ともに非課税の世帯
住民税非課税世帯とは、その名の通り「世帯にいる全員の住民税がゼロである世帯」のことを指します。
住民税には、所得にかかわらず定額を負担する「均等割」と、前年の所得に応じて負担する「所得割」の2種類があります。この両方が全員分非課税となって初めて住民税非課税世帯となります。
そのため、夫婦のうち夫が非課税でも、妻にパート収入などがあって住民税が課税されている場合は、住民税非課税世帯の対象外になるので注意が必要です。
医療費や介護保険料の負担が軽減されるメリットも
住民税非課税世帯に認定されると、住民税の負担がなくなるだけでなく、シニア世代にとってうれしい、多くの恩恵を受けられます。例えば、国民健康保険料の軽減、高額療養費の自己負担限度額の引き下げ、介護保険の利用者負担の軽減など、さまざまな優遇措置が受けられます。
また、国や自治体が独自に実施する臨時給付金の支給対象になることもあります。そのため、老後の生活費負担を軽減することが可能になります。
住民税非課税世帯になるための「3つの要件」
住民税非課税世帯に該当するかどうかは、前年の所得金額などによって判定されます。具体的な要件は自治体によって若干異なりますが、基本となる3つの要件があります。
1. 生活保護法による生活扶助を受けている
現在、生活保護法による生活扶助を受けている人は、一律で住民税が非課税となります。
2. 障害者、未成年者、ひとり親、寡婦で前年所得が135万円以下
障害者手帳を持っている人や、寡婦(夫と死別や離婚した後に再婚していない人など)の要件などを満たす場合は、前年の合計所得金額が135万円以下であれば住民税がかかりません。
3. 前年の合計所得金額が自治体の定める基準以下
多くの定年後の夫婦が該当する可能性があるのが、この3つ目の基準です。前年の合計所得金額が、自治体ごとの計算式で割り出された基準を下回る必要があります。
例えば、東京都世田谷区では、前年中の合計所得金額が図表1の金額以下の人は非課税となります。
図表1
| 同一生計配偶者および扶養親族がいない人 | 45万円 |
| 同一生計配偶者または扶養親族がいる人 | 35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数(年少扶養含む)+1)+31万円 |
世田谷区「非課税制度」より筆者作成
この例では、夫に同一生計で合計所得金額が48万円以下の配偶者(妻)がいる場合、非課税となる合計所得金額の目安は、「35万円×2(本人と妻)+31万円」で計算された101万円以下となります。
なお、住民税非課税世帯となる条件は自治体によって異なりますので、市区町村の窓口などでしっかり確認するようにしましょう。
年金受給者が住民税非課税世帯になるための収入目安
定年後の主な収入源となる「公的年金」ですが、年金は税金上の「雑所得」として扱われます。ただし、年金の額面通りに判定されるわけではありません。
夫婦2人世帯なら「年金収入211万円以下」がひとつの目安
公的年金には、収入に応じて差し引くことができる「公的年金等控除」があります。65歳以上の場合、最低でも110万円の控除が受けられます。
例えば、東京都世田谷区の基準(扶養配偶者1人・所得101万円以下)に当てはめると、夫の年金収入が「211万円以下」であれば、夫の所得が基準内に収まります。ここに妻の年金(基礎年金のみなど)が加わっても妻自身が非課税枠に収まっていれば、夫婦で住民税非課税世帯となることができます。
この「211万円以下」というのは、地域によってはそれ以下になることもあるため、住んでいる自治体の基準を確認することが大切です。
現役時代の給与が高い人は年金額だけでオーバーすることも
現役時代に大企業に長く勤めていた人で厚生年金を手厚く受け取っている場合などは、夫単体の年金受給額だけで年間211万円を超えるケースは珍しくありません。この場合、定年退職して年金暮らしになったとしても、年金収入が非課税の基準を上回ってしまうため、住民税非課税世帯にはなれません。
年金受給額が多くなる見込みの人は、住民税非課税世帯になるために、年金を早くもらい始めることができる「繰上げ受給」を検討するのも方法のひとつです。年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰上げて受け取ることができます。
繰上げ受給は、1ヶ月繰上げるごとに年金額が0.4%減額(最大24%)されます。なお、昭和37年4月1日以前生まれの人の減額率は、0.5%(最大30%)となります。
そのため、繰上げ受給によって年金収入を非課税の基準内に収めることができる可能性があります。ただし、繰上げ受給請求以降は、障害基礎(厚生)年金を請求することができなくなるといった注意点もありますので、慎重に検討することが大切です。
退職金をもらうと住民税非課税世帯の対象外になる?
定年時にまとまって支給される「退職金」は、その受け取り方によって住民税非課税世帯の判定への影響が大きく変わります。
一時金として一括で受け取る場合は影響しないケースが多い
退職金を「退職一時金」として一括で受け取る場合、税金上は「退職所得」として扱われます。退職所得は、他の給与所得や年金所得とは分けて税金を計算する「分離課税」という仕組みがとられています。
多くの自治体では住民税非課税世帯を判定する際の「合計所得金額」に、この分離課税された退職所得を含めません。そのため、退職金を一括で受け取ったとしても、そのせいで翌年から住民税非課税世帯の対象外になるといった心配は原則ありません。
年金形式(企業年金など)で受け取ると対象外になるリスクが高まる
注意が必要なのは、「企業年金」などの形で分割して毎月、または毎年受け取る場合です。退職金相当額を企業年金などの年金形式で受け取る場合は、雑所得として扱われます。
つまり、国の年金に企業年金が上乗せされる形になり、前述した年金収入が「211万円以下」などの非課税基準の目安を簡単に突破してしまう可能性が高くなります。
退職金の受け取り方を年金形式に選んだことが原因で、住民税非課税世帯の対象外になってしまうケースは多々あるため、選択には慎重さが必要です。
まとめ
定年後に住民税非課税世帯になれるかどうかは、退職金よりも年金収入の水準が大きなカギを握っています。一括で受け取る退職金は原則として非課税判定の合計所得に含まれないため、受取額を心配しすぎる必要はありません。
一方、退職金を年金形式で受け取る場合を含め、年金は雑所得として合計所得に算入されるため、世帯員のうち一人でも住民税が課税されると、住民税非課税世帯から外れる可能性があります。また、住民税非課税世帯は世帯員全員が非課税であることが条件である点も忘れてはなりません。
定年を迎える前に、夫婦それぞれの年金見込み額を「ねんきん定期便」などで早めに確認し、必要であれば公的年金の繰上げ受給の検討やパート収入の調整なども含めて試算しておくとよいでしょう。
出典
世田谷区 非課税制度
国税庁 高齢者と税(年金と税)
国税庁 退職金と税
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
