わが家は「世帯年収1000万円」ですが、収入が多くても“損する年収”と聞きました。「税金で手取りが増えない」そうですが、実際どれだけ損ですか? 制度の仕組みから確認
しかし、世帯年収が1000万円になったからといって、急に大きな税負担が生じるわけではありません。どのような点で「損」と感じやすいのか、制度の仕組みから確認してみましょう。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
世帯年収1000万円になったら税率が一気に上がるわけではない
まず確認しておきたいのが、所得税は「世帯年収」に対して課税されるものではなく、夫婦それぞれの所得を基に計算される点です。
例えば、夫500万円・妻500万円の共働き世帯と、夫1000万円・妻0円の片働き世帯はいずれも世帯年収1000万円です。しかし、それぞれの所得を基に税額を計算するため、世帯全体で見た所得税の負担が同じになるとは限りません。
なお、所得税を計算する際に関係するのが「超過累進課税制度」です。所得税は給与収入そのものではなく、給与所得控除を差し引き、さらに基礎控除や社会保険料控除などを反映して求めた課税所得を基に計算します。
2026年分の所得税率は5~45%の7段階で、課税所得が増えるほど適用される税率も段階的に高くなります。ただし、高い税率が適用されるのは、その税率の区分に該当する部分です。年収が一定額を超えたとしても、所得全体へ高い税率がかかるわけではありません。
したがって、「世帯年収1000万円を超えたら税金で一気に損をする」と考えるのは正確ではありません。夫婦のどちらがいくら稼いでいるのかによっても税負担は変わるため、世帯年収だけでは判断できないのです。
収入が増えるほど「手取りの増え方」が小さく感じることはある
では、なぜ「世帯年収1000万円は損」といわれるのでしょうか。理由の1つとして、収入が増えるほど、税金や社会保険料を差し引いた後の金額が額面収入ほどには増えにくくなることが挙げられます。
例えば、会社員には給与収入に応じた給与所得控除がありますが、給与収入が850万円を超えると控除額は195万円が上限です。850万円を超えて給与が増えても、給与所得控除はそれ以上増えません。
また、会社員の場合は、健康保険や厚生年金などの社会保険料も給与から差し引かれます。健康保険料は加入する健康保険や地域などによって異なるため、「世帯年収1000万円なら手取りはいくら」と一律に示すことはできません。協会けんぽの場合、2026年度の健康保険料率は都道府県ごとに異なります。
年収が増えたとしても、増えた金額がそのまま手元に残るわけではありません。「額面年収の伸び」と「実際に使えるお金の伸び」の差が、「稼いでいるのに手取りが思ったほど多くない」という感覚につながると考えられます。
子育て世帯では給付や保育料も確認しておきたい
税金以外では、子育てに関する制度が「損得」を意識するきっかけになる場合があります。例えば、0~2歳児の保育料は世帯の所得状況などに応じて決まるため、所得が高い世帯ほど負担が大きくなる場合があります(※)。
一方、3~5歳児については幼児教育・保育の無償化の対象となり、0~2歳児についても住民税非課税世帯は無償化の対象です。
※所得や子どもの数に関わらず、0~2歳児の保育料を無償化している自治体もあります。
また、かつては高所得世帯の「損」の例として、児童手当の所得制限が挙げられることがありました。しかし、児童手当は2024年10月から所得制限が撤廃されています。そのため、現在は「年収が高いから児童手当を受け取れない」という仕組みではありません。
さらに、自治体独自の子育て支援や助成制度が用意されている場合があります。世帯年収1000万円前後の家庭では、国の税制だけを見るのではなく、住んでいる自治体で利用できる制度についても確認しておくとよいでしょう。
まとめ
世帯年収1000万円に達したことで、突然税率が上がり、大幅に損をするわけではありません。
所得税は夫婦それぞれの所得を基に計算されるため、同じ世帯年収でも収入の配分によって負担は異なります。ただ、収入が増えると税金や社会保険料の負担も増え、手取りの増加を実感しにくくなることはあります。
「1000万円」という数字だけで損得を判断せず、夫婦それぞれの所得や家族構成、利用できる支援制度まで含めて考えることが大切です。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者 : 小川ひろ
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

