更新日: 2020.09.09 その他税金

<未婚のひとり親>に対する、住民税非課税制度って?

執筆者 : 前田菜緒

<未婚のひとり親>に対する、住民税非課税制度って?
児童扶養手当を受けている、未婚のひとり親に対する住民税非課税制度が始まります。現在、婚姻歴があるひとり親の場合は、所得控除のひとつである寡婦(夫)控除を受けられますが、未婚のケースでは受けられません。
 
婚姻歴の有無によって税負担が違うのは不公平であるという理由から、今回、住民税非課税の措置が取られました。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

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ひとり親家庭の現状

内閣府の令和元年版「子供・若者白書」によると、子どものいる世帯のうち、ひとり親世帯の割合は上昇傾向にあります。一方、ひとり親世帯の大学進学率は、全世帯の73.0%に比べ58.5%と低くなっています。
 
それもそのはずで、夫婦と子ども世帯の平均所得約740万円に対し、ひとり親家庭の平均所得は約320万円と約半分です。
 
2020年から住民税非課税世帯等は、大学無償化が始まりますから、進学率は今後変化するかもしれませんが、大学に行きたくても、お金がなくて行けないという現実がうかがえます。
 
一方、大学進学をそもそも希望していないケースもあります。大学に進学して勉強したいと思うのは、学ぶことに対して意欲があるからです。
 
しかし、小学校や中学校、高校で学ぶ意欲が低下してしまったり、学ぶことより収入を得ることのほうが優先だと考えたりすると、大学に行く意味を見いだせません。
 
学ぶことに意欲的かどうかは、子どもが小学校、中学校からの教育環境が関係するのではないでしょうか。
 
今回の個人住民税非課税制度は、児童扶養手当を受けている親が対象ですから、子どもが18歳までの制度といえます。

個人住民税が非課税となるひとり親とは

個人住民税が非課税となるのは、児童扶養手当の支給を受けていること、婚姻歴のないひとり親で、前年の合計所得が135万円以下の場合です。給与収入のみの場合は、収入の目安は204万円です。
 
本来、住民税が非課税になる所得の基準は、地域によって違います。例えば、東京23区の場合、前年の合計所得金額が「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+21万円」以下であれば住民税が非課税になります。
 
親1人、子1人の2人家庭なら、合計所得の上限は91万円です。これが地域関係なく135万円まで引き上がるということです。
 
適用されるのは、2021年度の住民税からですが、住民税は、前年の所得に対して課される税金ですから、2020年の所得から対象になります。
 
児童扶養手当は事実婚の場合は支給対象外です。住民税非課税の制度においても、事実婚の場合は適用されません。

住民税が非課税になるメリットとは

住民税が非課税であるメリットは、単に住民税が課税されないことだけではありません。0〜2歳の子どもがいれば幼児教育無償化の対象となりますし、小・中学生であれば、就学援助の対象となることがあります。
 
また2020年からは、高校の授業料や大学の授業料無償化が始まります。これ以外にも、国民健康保険料が軽減されるなど、非課税になることで優遇されることは多くあります。
 
該当する方は、2020年分の年末調整や確定申告で申請が必要です。忘れずに行っておきましょう。
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ

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