更新日: 2020.04.26 確定申告
注意しておきたい! 確定申告のよくある間違いって?
そのため税金を還付してもらうために確定申告しようと思っても、仕組みが良く分からず間違えやすいこともあるので、そのいくつかを取り上げます。
執筆者:柴田千青(しばた ちはる)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
2級DCプランナー/精神保健福祉士/キッズ・マネー・ステーション認定講師/終活アドバイザー
小美玉市教育委員
出産を機にメーカーの技術職から転身。自身の資産管理や相続対策からお金の知識の重要性を知り、保険などの商品を売らないFPとして独立。次世代に伝えるための金銭教育活動とともに、セミナー講師・WEB記事を中心とした執筆・個別相談などを行う。
確認しておきたい医療費控除の対象
1月から12月までの1年間に医療費が多くかかった場合、医療費控除を行うと払いすぎた税金の還付が受けられます。勤め先の会社などで行う年末調整ではこの控除は行われないので、医療費控除を受けるときは確定申告することになります。
医療費というと、病院や薬局でかかった費用がまず思いうかぶかと思いますが、医療機関以外でかかった費用でも控除の対象にできるものがあります。
反対に、医療機関で払ったとしても、控除の対象にならないものもあるので、どのようなものが医療費控除の対象になるか、間違いやすいものについて主だったものを確認してみましょう(※1)。
・診察代や治療費
健康診断や人間ドッグの費用は、治療が必要になるような異常が発見された場合は対象となりますが、異常などが発見されなかった場合は対象外です。
また病気ではありませんが、妊娠出産に伴う定期検診や検査の費用、分娩費、入院費、緊急時のタクシー代、治療目的の母乳外来などは医療費控除の対象になります。
ただし、入院中の差額ベッド代や食費、入院時の着替えなどの購入費などは対象外です。
・医薬品代について
市販の薬も対象となります。ただし、ビタミン剤など健康増進や予防目的のものは除きます。
・通院に要する交通費
通院の際にかかった交通費も対象となります。ただし、公共交通機関の利用が基本で、タクシー代が認められるのは公共交通機関が利用できない場合のみとなります。自家用車のガソリン代や駐車料金などは控除の対象ではありません。
・寝たきりの人のオムツ代
病気で寝たきりとなった人のオムツ代についても、対象となります。医師発行のおむつ使用証明書や、市町村長が交付する確認書など(2年目以降の場合)が必要です。
医療費控除の計算
実際に払った医療費から医療費控除できる金額を算出する際には、確認すべき点や、差し引きするものがあります。
まず、「10万円以上の医療費がかかった場合は医療費控除を受けられる」という説明を目にすることもあるかと思いますが、10万円以上というのは総所得が200万円以上の人の場合です。総所得200万円以下だと、総所得の5%を超えて支払った医療費に対して、医療費控除を受けることができます。
例えば総所得100万円の場合、医療費が5万円を超えると医療費控除を受けることができるのです。
かかった医療費を10万円まで所得から引けると勘違いされている人もいますが、医療費がこの総所得の5%か10万円のいずれか少ない方を超えないと医療費控除は受けられない、ということです。
なお、医療費控除は所得から控除して税金を再計算するというものなので、上述の医療費分が戻ってくるのではなく、そこにかかる分の税金が還付されることになります。
例えば、控除対象となる医療費が10万円で所得税の税率が5%の人だったら、還付される額は5000円となります。また、保険金や給付金を受け取っていた場合は、その金額を差し引く必要があります。
もし保険金をもらっていたのに申告しなかった場合、税務署の調査を受けて修正するようなときには過少申告加算税がかかったり、納期限に遅れると延滞税がかかったりと、不足していた税金の他にも余計に多く税金を払うことになります。
医療費控除を受けるときは、かかったお金だけでなく、もらったお金についても忘れないようにしましょう。
なお、ドラッグストアなどで一定の医薬品を購入する場合、セルフメデュケーション税制(医療費控除の特例)といって、1万2000円を超えると所得控除できる制度もあります。普通の医療費控除に満たない額でも受けられる制度で、指定された成分を一定量含む医薬品の購入に限り、控除対象となります。
対象となる医薬品はレシートなどにも分かるよう表示されます。なお、こちらを選択すると普通の医療費控除は受けられません。セルフメデュケーションの対象以外にも医療費がかかっている場合は、どちらの制度を使った方が良いかよく検討しましょう。
こんな人は確定申告が必要です
給料から源泉徴収されている人でも、場合によっては確定申告が必要な人がいます。
例えば、2カ所以上から給料をもらっている場合、それぞれの勤め先で年末調整され源泉徴収票をもらっていても、それぞれの勤め先からの収入をあわせて計算し直すと源泉徴収された税額と違う場合が出てくるので確定申告が必要です。
もし源泉徴収で払い過ぎていた場合は、確定申告すると、その払いすぎた分が還付されるので、副業をしている人などは確定申告についてよく理解しておきましょう。なお、給与が1カ所からであっても、その他の所得が20万円を超えてくる場合は確定申告が必要です。
よく収入が103万円以下だったら税金がかからないと思っている人がいますが、それは勤め先からの給与収入の場合です。給与所得控除と基礎控除額をあわせると103万円までは所得0円になるという計算のことです。
もし副業がプチ起業などの場合、経費などを引いた所得が基礎控除額(令和2年より48万円*高額所得者は所得に応じて減る)を上回ってくると、その他の所得控除を引いても課税される所得が出てくる場合もあります。
「そんなに稼いでないから大丈夫」と思っていたのに、税金を払う必要があったということにならないよう、収入がどのような所得に当てはまるのか注意するようにしましょう。
もし間違いに気がついたら
すでに行った確定申告に間違いがあったと気づいたら、申告期限前ならあらためて正しい確定申告を行うだけで済みます(※2)。
もし申告期限後に、税金の払い過ぎに気付いた場合は、更正の請求を行い、その内容が認められると(配当控除の申告漏れなど、認められないものもあります)払い過ぎていた税金が還付されます。更正の請求は5年間できますので、申告し忘れていた医療費控除などがあれば請求してみるとよいでしょう。
反対に、支払う税金を少なく申告していた場合は修正申告を行いますが、過少申告加算税(場合によっては重加算税)や延滞税がかかってきます。
まとめ
税金の納め方について知る機会がなかった人も多いでしょう。しかし、多様な働き方が認められるようになってきた現在、今後もそのようなケースが増えていくことを考え、義務でもある納税とその確定申告についてよく知り、ご自身で迷わず手続きできるようにしていきましょう。
出典・参考
(※1)国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
(※2)国税庁「申告が間違っていた場合」
執筆者:柴田千青
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者