更新日: 2020.07.15 控除
パートを増やして家計を支えたい。そんな方のために、あらためて扶養控除をおさらい!
それはとても良いことなのですが、働き方によっては、思わぬ負担が生じてしまうことがあります。そのポイントとなるのが、配偶者控除および配偶者特別控除です。
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
配偶者控除と配偶者特別控除
まず、押さえておきたいのが配偶者控除と配偶者特別控除についてです。
配偶者控除とは、納税者本人に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の所得控除が受けられるもので、その年の12月31日時点ですべての要件をクリアしている必要があります。その要件とは4つです。
- (1)民法上の配偶者であること(内縁の妻、事実婚は対象外)
- (2)納税者と生計を一にしていること(単身赴任などで別居をしていても家計が一緒であればOK)
- (3)年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- (4)青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと。もしくは、白色申告者の事業専従者でないこと
2020年から給与所得控除が55万円に改正されたため、配偶者控除の48万円とあわせて103万円までであれば、所得税は非課税です。ただし、住民税は数千円程度ですが発生します。
一方の配偶者特別控除とは、配偶者控除額を超える所得がある配偶者が対象であり、所得に応じて所得控除が受けられるというものです。
配偶者控除と同様に、その年の12月31日時点ですべての要件をクリアしている必要があります。配偶者特別控除を受けるためには、6つの要件をクリアしていなければなりません。
- (1)民法上の配偶者であること(内縁の妻、事実婚は対象外)
- (2)控除を受ける人と生計を一にしていること(単身赴任などで別居をしていても家計が一緒であればOK)
- (3)配偶者の年間合計所得金額が48万円超133万円以下であること
- (4)青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと。もしくは、白色申告者の事業専従者でないこと
- (5)納税者本人のその年の合計所得金額が1000万円以下であること
- (6)配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと
令和2年以降の注意点として、以下の2点があります。
・配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。
・配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。
配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額によって段階的に控除額が決まっています。最高控除額は38万円で、納税者本人の合計所得金額900万円以下で配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下の場合となります。
また、これらの控除を受けるには、納税者本人が所定の申請書を勤務先に提出する必要があります。
106万円の壁、130万円の壁に注意する
配偶者特別控除があるといっても、106万円以上の所得がある場合には注意が必要です。
週20時間以上の勤務で賃金が月額8万8000円以上、雇用期間1年以上が見込まれる、厚生年金の被保険者が501人以上いる企業に勤めている場合には、合計所得が106万円以上になると、配偶者が自ら社会保険に加入しなければならなくなるのです。つまり、扶養から外れてしまいます。
130万円以上の場合には、勤務先の規模や勤務時間等に関係なく扶養から外れることになり、社会保険に加入しなければなりません。
つまり、それぞれの壁を考慮しながら、働き方を考える必要があるのです。また、納税者本人の勤務先に配偶者手当がある場合には、手当がもらえる限界所得はいくらかを確認し、働き方を決めるのも必要です。家計全体で、所得を増やすための合理的な働き方について、考える必要が出てきます。
正社員やフルタイムでバリバリ稼ぐのもアリ?!
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子供の手が離れている等で時間的にゆとりがあるのなら、思い切って正社員になる、フルタイムでバリバリ働くのもアリではないでしょうか? どうせ壁があるのなら、壁を気にせずに思いっきり働いて、収入アップを目指すのもひとつかもしれません。
納税者本人の扶養から外れるため、納税者本人は税額控除が減り手取り額は少なくなってしまいますが、その分、配偶者の所得が増えます。家計全体で考えれば手取り額は増えますし、配偶者の年金受取額も増え、一石二鳥です。
働き方に正解はありません。自分にとっても家族にとって、もっともふさわしい働き方はどのようなものなのかを考え、どのような控除を受けるのかをこの機会に考えてみてください。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト