更新日: 2020.09.28 年末調整
年末調整のキホン。所得税の仕組みを知って節税に役立てよう
会社員の多くは、勤務先で税金の計算をしてくれるので税金に無頓着です。税金を意識するのは、年末調整のときやマイホームを購入したときぐらいでしょう。
しかし、所得税の仕組みを知れば節税のヒントが見えてきますので、もっと関心を持ってはいかがでしょうか。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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所得税の仕組み
所得税がどのように計算されるご存じですか? 会社員等は会社で所得税を計算してくれるので、どのように所得税が算出されるかご存じない方も多いのではないでしょうか。
しかし、自分の所得税がどのように算出されるのかに無頓着なのは感心しません。おおざっぱで良いので、所得税の算出プロセスを確認しましょう。給与所得者の場合、下記のようになります。
(1)給与の収入金額から給与所得控除額を差し引いて給与所得の金額を算出します。この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて決まっています。
(2)給与所得の金額から所得控除額を差し引いて課税所得金額を算出します。所得控除には扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除などがあります。
(3)この課税所得金額に所得税の税率(5~45%)を適用し、所得税額を算出します。
例えば、年収500万円の方のケースで所得税(令和1年分)の算出するプロセスは以下のとおりです。
(1)給与所得控除額は500万円×20%+54万円=154万円となります。したがって給与所得の金額は、給与の収入金額500万円-給与所得控除額154万円=346万円です。
(2)所得控除の合計額は社会保険料控除60万円+生命保険料控除10万円+配偶者控除38万円+扶養控除76万円+基礎控除38万円=222万円とします。課税所得金額は給与所得の金額346万円-所得控除の合計額222万円=124万円となります。
(3)所得税額は、課税所得金額124万円×税率5%=6万2000円です。
なお、ここでは復興特別税は考慮していません。
ポイントとして押さえておきたいのは、収入と所得は違うということ。また、同じ収入でも所得控除が多ければ税金は少なく済みます。所得控除はメジャーなものからあまり知られていないものまで14種類(令和元年現在)あります。令和2年分からは、ひとり親控除が新たに加わります。
所得控除は節税に大いに役立つので、該当するものがあれば忘れずに活用しましょう。なお、所得控除の中には医療費控除のように、年末調整ではなく確定申告をしないと控除を受けられないものもありますので注意しましょう。
年末調整って何?
給与所得者の所得税及び復興特別所得税は、勤務先が毎月の給与やボーナスから源泉徴収されます。毎月の給与やボーナスから源泉徴収される所得税等の額は、「給与所得の源泉徴収税額表」により算出します。この毎月徴収する額はあくまで概算です。
このため、その年の最後の給与の支払を受けるときに、本来徴収すべき所得税等の1年間の総額を再計算し、源泉徴収した合計額との過不足額の精算が行われます。これを「年末調整」といいます。
給与所得者も確定申告が必要な場合
会社員等の給与所得者でも、年間の給与収入が2000万円を超える人などは年末調整できず、自分で確定申告をしなければならない場合があります。申告漏れのないように気を付けましょう。
また、医療費控除のように年末調整できない所得控除もあります。確定申告することでのみ所得税の還付を受けられます。該当する場合は積極的に確定申告しましょう。
自分で税額を計算するのは難しいかもしれませんが国税庁のホームページ上にある「確定申告書等作成コーナー」で作成すれば、画面の案内に従って金額等を入力することで確定申告書を作成できるので試してみてはいかがでしょうか。
- ★年間の給与収入が2000万円を超える人
- ★給与と退職金以外の所得が20万円を超える人
- ★2カ所以上から給与をもらっている人
- ★年金を受け取った人など
- ★高額の医療費を支払った人
- ★災害や盗難の被害にあった人
- ★マイホームを購入した人
- ★寄付した人
- ★株で損をした人など
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー