更新日: 2020.10.24 控除

外国株式等への投資で得た所得には二重に税金が?二重課税に対する控除って?

外国株式等への投資で得た所得には二重に税金が?二重課税に対する控除って?
いまだに1989年の過去最高値を超えられない日経平均。
それに対して米国のNYダウやS&P500指数などは、途中途中で大きな下落がありながらも右肩上がりの上昇を続けています。
 
そんな海外の市場に魅力を感じて投資をしている人も多いのではないでしょうか。
しかし、外国で生じた所得は外国の税制にのっとって税金が課せられる場合があります。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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所得に対する二重課税とは

外国で所得を得ると、外国と日本の両方で税金が課せられる場合があります。これを「二重課税」といいます。
 
例えば、米国株への投資で得た配当には、米国で10%の源泉徴収が行われます。さらに日本の証券会社で源泉徴収を選択している場合には、20.315%(復興特別所得税を含む)が徴収されます。
 
投資対象が同じ株式でも、国内の株式と海外の株式という違いだけで課せられる税金が違うのは、税の公平性の観点からも問題となります。そのため、主に二重課税の回避や軽減を目的として「外国税額控除」という制度があります。
 

外国税額控除制度とは

外国で課税された所得に対して日本でさらに課税すると、国際間での二重課税になるため、外国所得税に相当する金額を外国税額控除として税金を調節できるのが外国税額控除制度です。
 
次の外国所得税額、または所得税の控除限度額のいずれか少ない金額が控除額となります。
 
・外国所得税額
・所得税の控除限度額=各種税額控除後の所得税額×(国外所得総額÷合計所得金額)

 
所得を得る国によっては、上記の控除限度額よりも外国所得税額が多い場合があります。そのようなときのために、外国税額控除制度では外国所得税額が控除限度額を上回る場合、さらに復興特別所得税の税額からも控除が受けられるようになっています。その際の限度額を「復興特別所得税の控除限度額」と呼びます。
 
復興特別所得税の控除限度額=復興特別所得税額×(国外所得総額÷合計所得金額)
 
外国税額控除を受ける場合は確定申告が必要となります。申告の際には、控除額に関する計算の明細書および外国税を課されたことが分かる証明書も必要です。証券会社が発行する「年間取引報告書」や「支払通知書」などが証明書となります。
 
外国税額控除は、まず所得税から控除されます。所得税で控除しきれないときは都道府県民税から控除され、さらに控除しきれないときには市区町村民税から控除するという3段階になっています。
 

NISA口座は外国税額控除制度の対象外

NISA口座は、株式などの売却益や配当金に対して課税されない優遇税制です。
 
NISA口座で購入した海外株式などの配当金は、外国税については課税されますが、国内の所得税・住民税は非課税となります。外国税のみ課税されることから二重課税に該当しないので、外国税額控除の適用は受けられません。
 

確定申告の手間を軽減する二重課税調整制度

2020年1月1日施行の税制改正により、二重課税が生じないように投資信託などから支払われた外国所得税は、分配金に係る源泉所得税の額から控除できる調整措置がとられることとなりました。2020年1月1日以降に支払われる投資信託などの分配金に対して自動的に適用されます。
 
二重課税調整制度の対象となるのは、外国資産(株式・不動産など)に投資を行い、そこから生じた利益を基に投資家に分配金を支払っている投資信託などです。二重課税調整制度の対象となる可能性の高い上場ETF・上場REITは、日本取引所グループのホームページ「証券税制について」にある「東証上場ETF・REITの二重課税調整(外国税額控除)について」で参照できます。
 
また、非上場商品については取引のある証券会社などでの確認が必要となります。なお、今回の税制改正による控除の対象は所得税のみであり、住民税(5%)は控除対象外となります。
 
制度の概要については、日本証券業協会が開示している「投資信託等の二重課税調整制度開始のご案内」で確認できます。
 

まとめ

海外への投資で所得を得ている人は、知らないうちに所得に対して二重に課税されているかもしれません。その場合は還付を受けられる可能性がありますので、外国所得税が外国税額控除制度の適用対象かどうか確認するようにしましょう。
 
参考
日本取引所グループ 「証券税制について」
日本証券業協会 「投資信託等の二重課税調整制度開始のご案内」
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)


 

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