更新日: 2020.12.25 控除

2021年度税制改正大綱で「住宅ローン控除見直し」へ

執筆者 : 吉野裕一

2021年度税制改正大綱で「住宅ローン控除見直し」へ
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンの借入残高に対して1%の税率で所得税額から控除が受けられる制度ですが、現在の低金利時代に合わないと会計検査院から指摘があり、政府は今回の税制改正大綱で2022年度から見直す方針を固めています。
 
その内容は、どんなものだったのでしょうか
吉野裕一

執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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現行の住宅ローン減税は

現在、施行されている住宅ローン控除の適用を受けるには、国税庁が提示している「新築又は取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するもの」という要件や、「特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること」などの要件を満たす必要があります。
 
住宅ローン残高に対して1%の控除が1年で最大40万円、10年間受けることができ、11年目から13年目は以下のどちらか少ない額が控除されるようになっています。

・年末残高等(上限4000万円)×1%
・(住宅取得等対価の額-消費税額)(上限4000万円)×2%÷3

 

具体的な数字で見ていきます

仮に4100万円の住宅ローンを35年で借り入れて、5000万円の住居を購入、2020年11月の変動金利の最低水準である0.380%の場合を例とします。
 
返済額は毎月10万4270円、年額では125万1240円となります。1月から返済が始まったとして12月の残高は3990万2642円となり、この額の1%の39万9000円が所得税から控除されます。
 
しかし返済額の内訳では、返済元本は1年間で109万7358円、返済利息は15万3882円となります。住宅ローン控除は借入利息の負担を軽くするために行われている税制優遇ですが、この場合の返済利息は15万3882円なので、控除額の39万9000円-15万3882円=24万5118円は元本の部分が軽減されていることになります。
 
この返済利息よりも控除額が大きくなる部分について、実情に合っていないと指摘されており、2022年度の税制改正の内容によっては1%か、利息分のどちらか少ない額での控除とする可能性が高くなってきたのではないでしょうか。
 

縮小だけではなく拡大も

住宅ローン控除の所得控除の見直しに関しては減税措置の縮小に見えますが、2021年度の税制改革大網では控除の対象が拡大された部分もあります。
 
昨今では子どもを持たない家庭や結婚をされずに住居を購入される方も増えてきていることから、これまでの家族を想定した床面積の要件が現行の50平方メートル以上から40平方メートル以上に拡大されています。ただし、50平方メートル未満の床面積で住宅ローン控除を受けようとする場合には、合計所得金額が1000万円以下という制限が設けられました。
 

住宅ローン控除期間の特例は2022年末まで延長

消費税増税に伴う特例措置として、2020年末までの入居を要件に住宅ローン控除の期間が10年間から13年間へと3年間延長されていましたが、今年の新型コロナウイルスの影響を考慮して、この要件に対しては2022年末までの延長が決まりました。
 

まとめ

今回の税制改正では本来の住宅ローン控除の趣旨ではなく、1%未満の住宅ローン金利で借り入れることで借入元本分までも控除されていた問題に対して指摘が入っており、この点については2022年度の税制改正で議論される見込みとなっています。
ただ一時、フラット35の長期金利でも1%未満となった時期があり、既に借り入れをしている人への対応がどうなるのかも注目してみたいですね。
 
とはいっても住宅ローン金利は低水準が続いており、今後、住宅を購入される人が増えれば景気回復への期待が高まりそうです。
 
出典
国税庁 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
 

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