更新日: 2021.02.16 控除
保険料の控除を誤っていたことが発覚。どうすればいい?
しかし、年末調整の際、これらの保険料控除が漏れてしまったり控除額を少なく申告してしまったりするなど誤りが生じてしまうこともありえます。こうした場合はどのように修正すればいいのでしょうか?
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
保険料控除の修正方法
年末調整時に保険料控除を誤ってしまった場合、すぐに気がつけば年末調整書類の再提出で修正を行うことも可能です。雇用主の年末調整の期限は翌年の1月31日までですが、早めに完了させてしまっている場合もありますので気がつき次第、担当者に問い合わせしてみることをおすすめします。
しかし、雇用主が年末調整の処理を完了させてしまった場合には、修正を行うのに「確定申告」が必要となります。
確定申告で控除漏れの申告を行う場合、所得の種類にもよりますが、作成が簡単な「申告書A」での申告をおすすめします。また、提出方法は所轄の税務署への持ち込みのほか、e-Taxによる電子申告や郵送も選択可能となっています。
生命保険料控除の注意点
生命保険料をはじめとした各種保険料控除は、契約年や保険内容によって適用要件が細分化されているため、控除上限額を誤ってしまう場合があります。
保険料控除において適用できる保険料には、契約者の死亡などに起因して保険金が支払われる保険に対する「一般の生命保険料控除」、入院・通院などにより保険金が支払われる「介護医療保険料控除」、個人年金保険のうち個人年金保険料税制適格特約が付与されている場合に適用される「個人年金保険料控除」と火災保険とセットで加入する「地震保険料控除」があります。
このうち地震保険以外の保険料控除は、2011年12月31日以前に契約した旧制度とそれ以後の新制度に大別され、旧制度・新制度・両制度の混在によって適用できる保険料と控除額の上限が表1.2のように異なるため注意が必要です。
表1.新契約に基づく場合の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超 4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円超 8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
(国税庁HPより抜粋)
表2.旧契約に基づく場合の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万5000円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万5000円超 5万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万2500円 |
5万円超 10万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万5000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
(国税庁HPより抜粋)
生命保険契約が新契約と旧契約の両方が存在している場合は、支払保険料の額で控除上限額が変化します。
旧契約の支払保険料が10万円を超える場合は旧契約の計算に準じ最高5万円の控除となります。旧契約の支払保険料が6万円以下の場合は、新契約と旧契約でそれぞれ控除額を算出・合算した金額となりますが、控除の上限額は4万円までとなります。
地震保険料控除について
保険料控除は生命保険だけでなく、地震保険の保険料についても控除を受けることができ、控除額は表3の通りとなっています。
表3.地震保険料控除の金額
年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
---|---|
5万円以下 | 支払金額の全額 |
5万円超 | 一律5万円 |
(国税庁HPより抜粋)
地震保険料は近年値上がり傾向となっているため、5年間の長期契約を結び、保険料を一時払いしてしまうことで保険料を節約することができます。
しかし、支払った保険料を初年度に全額控除することはできず、契約年数に応じた年間保険料のみを申告することとなります。
まとめ
生命保険や地震保険などを対象とした保険料控除は、自身で控除額を計算する必要があるため、年末調整時にミスや漏れが比較的生じやすくなっています。また、誤りに気がついたタイミングによっては確定申告が必要となる場合があります。
生命保険料と地震保険料の控除上限額は12万円+5万円の合計17万円となり、所得税の税率などにもよりますが、数万円程度の還付を受けられる可能性もありますので正確な申告を行うよう心がけましょう。
[出典]
国税庁「No.1140 生命保険料控除|
国税庁「No.1145 地震保険料控除」
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表