2017.06.13相続

相続税の申告漏れ、税務調査の対象になる?

Text : 黒木 達也

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相続税の控除額が大幅に縮小され、これまで相続税の対象にならなかった人でも、支払いの対象になってきています。「うちは財産が少ないから」と過信し放置しておくと、「税務調査」という、思わぬ落とし穴が待っているかもしれません。

相続発生時に相続額を把握する

親などが亡くなり、その財産を相続すると、相続財産の総額を計算し、必要に応じて税務申告と納税をする必要があります。土地や家屋などの不動産、預金や保有株式などの金融資産、美術品・クルマ・骨董品など、相続財産全体を集計してみると、思ったより額が増えているケースもあります。相続発生時に、とくに不動産などが含まれる場合は、税理士などに依頼し相続財産額を算定しておくとよいでしょう。

「財産が少ないから大丈夫!」と何もせずに放っておくと、突然、税務署の「税務調査」の対象になりかねません。とくに土地を相続した場合は、大都市圏で評価額が上昇している地域もあり、予想外に高額な相続財産と認定されることがあります。今年から相続税控除額の縮小が、現実問題として動き出しました。法定相続人の数が1人しかいないなどの条件も加わると、思わぬ結果を招きかねません。

相続税の「無申告」は狙われる

近年の税務調査対象の一つが「無申告者」の洗い出しです。意図的に相続税の申告しない人は当然ですが、「自分は納税対象ではない」と思い込み申告しなかった人に対しても、税務調査はやってきます。一応は強制ではなく「任意調査」ですが、直接自宅等へ調査官が来訪するのを拒むことは出来ません。いくつかの質問をしながら、隠し口座、名義預金、タンス預金などがないかなどを、しっかりと調べ上げていきます。とくに孫名義などで親などが管理している名義預金には、眼を光らせています。
税の申告期限が過ぎても、すぐに調査には来ません。申告した人も無申告の人も、1年後くらいの時期に、事前通告があり周到な準備をして税務調査が実施されます。無申告にもかかわらず相続財産の多い人が対象になるのは当然ですが、すでに申告した人でも、申告書の精度が明らかに低い、被相続人の口座から高額の出金記録がある、申告した相続財産が明らかに少ない、といった事実があれば務調査の対象になります。

不正に対するペナルティーも厳しい

この税務調査で、正しい申告がされていないことが判明すると、修正申告と納税が課せられます。その際、無申告だった人には、通常申告では適用される「小規模宅地の特例」(土地評価額が80%減)などが適用できなくなるほか、「無申告加算税」「過少申告加算税」などが、以前に比べ高くかかってきます
また税率は変わっていませんが、期限から遅れて納付したときにかかる「延滞税」も、高い利率のため、注意が必要です。こうした税率は、2017年1月から引き上げられており、不正納税に対するペナルティーは強化されています。

税務調査の本丸は高額所得者

相続税の申告の不備があった人が税務調査の対象になりますが、高額所得者や海外資産を多く保有する人が亡くなった場合、この税務調査の対象になる確率はさらに高くなります。1件の調査で、多額の追徴金が得られることも理由の一つかもしれません。
高額所得者の代表的存在が、会社経営者と開業医だといわれています。税務署では、これまでの確定申告書などで、高額所得者を生前からマークしていることが多く、保有財産などの把握も大まかには済んでいます。相続発生時点で、実態がわかっているため、実際の申告額が少なすぎると、直ちに税務調査の対象になります。
2016年に話題となった「パナマ文書」にみられるように、資産を海外に移転させ、パナマのように優遇税制を採用している地域に隠匿している富裕層もいます。こうした人に対しては、税務調査だけではなく、「海外財産調査制度」や「海外転出時課税制度」などの制度を整備、財産額を把握し、相続時に財産隠しができないような対策を準備しています。富裕層の人びとだけが、いい夢を見ない制度が整いつつあります。

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黒木 達也

Text:黒木 達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職