2019.03.01 資産運用

本場英国と比べると物足りない?日本のNISA、これでいいの?

「貯蓄から投資へ」のスローガンのもとに、金融庁はNISAを推進しています。

貯蓄一辺倒の日本人に向けて、株式や投資信託をはじめとした「変動性金融商品」に関心を持たせようという試みです。今年でもう6年目になります。

NISAは運用益の非課税をメリットとしていますが、実は日本のNISAは、英国のISA(Individual Savings Account)をモデルにしたものです。でも、本場英国の制度と比べるとこれでいいのだろうかという点が目につきます。

今回はNISAとISAを比較してみます。

NISAは時限立法、恒久化されていない

まず、日本のNISAは時限立法です。「NISA」が2023年まで、「つみたてNISA」が2037年までです。
 
特にNISAについては、今年2019年の非課税枠で購入した商品はロールオーバーができなくなるため、5年以内に売却するか、課税口座に移すかの選択を迫られることになります。2020年以降に買い付けた商品も同様です。
 
非課税のメリットは「5年だけですよ。それまでに結果を出してくださいよ」と言われていることになります。
 
これに対し、英国ISAはどうでしょうか? 口座開設期間も非課税期間も恒久です。すなわち、好きな時期に、好きな商品を購入して、自分が死ぬまでは、いつまでも非課税のメリットを享受できるようになっています。
 
ですから、「この資金は7年後には、子供の教育資金に使おう」「30年後には、この資金を老後資金にあてよう」という計画ができるわけです。
 
これだけでも全然違います。
 

NISAは非課税枠が小さい

日本のNISAの非課税枠は年120万円です(※つみたてNISAの非課税枠は年40万円ありますが、両者の併用はできないので比較からは除外します)。
 
これに対し、英国ISAは、株式型ISA、預金型ISA、イノベイティブISA、ライフタイムISAを合計して年2万ポンド(約280万円)です。
日本のNISAと比べ、年間2.5倍弱の非課税枠があります。
 
NISA、ISAとも、年ごとの非課税枠を積み上げて、現時点での運用可能限度額を算出することができます。単純計算をすると、5年続けて商品を購入すれば、上記、非課税枠の5倍の金額が運用可能になります。
 
それに加えて、ISAの創設が1999年なので、1999年からずっと商品を買い続けている人は、かなり大きな金額を運用していることになります。これらを考慮して、NISAとISAを現時点までの運用可能限度額で比較すれば、かなり大きな差がつくことになります。
 
例えば、両者それぞれに2014~2018年まで継続投資した場合の運用可能限度額を比べると次の通りになります。
 
日本NISA  560万円
英国ISA   8万5480ポンド(約1197万円)
 
英国ISAの場合、1999年からの継続投資ができるので、それを考慮して運用限度額を計算すればさらに大きくなります。
 
注)日本NISAの2014年・2015年の非課税枠は100万円なので、5年計は560万円になります。英国ISAの年あたり運用可能額は、1999年以来、少しずつ増えて、2019年は2万ポンド(約280万円)になっているので、単純に掛け算して比較するわけにはいきません。上記比較はそれを反映済みです。
 

NISAはロールオーバーをしても、商品を買い替えても、新しい非課税枠を消費してしまう

日本のNISAで資金を運用する際、皆さんを煩わせているのは、次の点ではないでしょうか?
 
(1)5年間の非課税枠終了後、ロールオーバーが1回しかできない。またその場合、新しい年度の非課税枠を使ってしまう。
 
(2)非課税限度額は購入額で管理される。
 
●年度内に購入した商品をその年度中に買い替えると、また、新しい非課税枠を消費してしまう。翌年度以降に買い替えても、翌年度以降の非課税枠を消費することになる(年度内売却でも、次年度以降売却でも、非課税枠の再利用は不可)。
 
●投資商品から得た配当・分配金で新たな商品を購入すると、その年度の非課税枠を消費してしまう。
 
上記の問題点が英国ISAではこうなります。
 
(1)口座開設期間、非課税期間とも恒久なので、ロールオーバーという手続き自体が不要。新しい年度の非課税枠は新しい商品に使える。
 
(2)非課税限度額はISA口座への拠出額で管理される。すなわち、その年度の非課税限度額まで、ISA口座に拠出できる。
 
●拠出した後、ISA口座内で、商品を買い替えても非課税枠は減少しない(いわゆるスイッチングが可能)。
 
●ISA口座内の商品の配当・分配金で、金融商品を購入しても、非課税枠は減少しない。
 
●買い付けた年度内にISA口座から別口座に資金を払い出すと、その分だけその年度の非課税枠が減るので、その年度内に新しい金融商品の買い付けが可能になる(2016年4月から施行されたフレキシブルISAという制度による)。
 

まとめ

日本のNISAは株式・投資信託型しかありませんが、英国ISAには、株式型、預金型、イノベイティブファイナンス型、ライフタイム型といろいろ種類があります。
 
このように、日本のNISAと英国ISAを比較すると、日本のNISAはまだまだの制度だということが分かります。
 
なんといっても、NISAという制度を恒久化することが急務です。それにより、投資者に安心感を与え、長期的な計画をもって投資できるようになります。
また、運用商品などの入れ替え=スイッチングを制約なしにできるようにすることが必要です。そうしないと、NISAが日本で根付くことはないと思います。今後の改善に期待したいと思います。
 
出典:Individual Savings Accounts (ISAs)
 
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
 
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浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
 
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
 
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
 
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

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