いまさら聞けない不動産投資の基本(4)長期投資ならではの物件選定

配信日: 2020.05.02

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いまさら聞けない不動産投資の基本(4)長期投資ならではの物件選定
前回まで不動産投資の歴史、メリット・デメリットについてお伝えしてきました。不動産投資の最大の魅力は家賃収入が得られることです。入居者がいなければ収入は得られません。不動産投資ではいかに空室リスクを抑え、安定した収入を維持できるかが重要です。
 
不動産投資の対象となる物件選定のポイントはいくつかありますが、最も重要なのは立地であるといえるでしょう。立地は一度決めたら変更できません。
今回は投資用不動産の物件選び、特に立地についての考え方についてお伝えします。
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

人口減少社会での物件選定

日本は人口減少社会に突入しました。すでに日本の空き家は約850万件に達し、7戸に1戸は空き家という状況です。日本では今もなお新築の供給が盛んに行われていることから、今後空き家の数も間違いなく増えていきます。
 
そうした状況の中で物件を選ぶ際には、所在する立地が時代や環境の変化に対応できるかを見極めることが重要になります。
 
すでに人口が減少し始めているエリアでは、今後も何らかの有効な対策が打てない限りその傾向は変わらず、過疎化していくおそれがあります。
 
そうした場所は不動産の需要も減少し、需要がなくなれば家賃や物件価格も下落します。物件を選ぶ際は、そうした場所は避けなければなりません。
 
すでにそうしたエリアに物件を保有している場合には、入居者が確保できているうちに、今後も需要が見込めるエリアの物件に組み替えるなどの検討も必要になります。投資用物件はこのような人口減少社会でも、今後30年、40年先を見据え需要が維持できる必要があります。

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コンパクトシティ化

人口が減少していく社会の中で、行政サービスを維持するために「コンパクトシティ化」が検討されているエリアもあります。
 
道路などのインフラ整備や、県立・市立など公立の小中学校・病院などの施設の運営、市町村営バスの運行、ゴミの収集処分などは住民税や国から地方への交付金によって行われています。
 
このような自治体などが行うサービスは、人口減少による税収減により、運営が困難になるため、人が住むエリアを中心部に集め、コンパクトな街に造り替えよう、というのがコンパクトシティの考え方です。
 
こうした取り組みが進めば、人が住むエリアとそうでないエリアが分かれ、人が住まないエリアでは、当然のことながら需要が減退し価格も下がります。
 
コンパクトシティ化を目指す自治体の多くは、思うように進んでいないのが現状ではありますが、こうした動きは今後の行政の生き残りを図る上で必須であり、物件選定の際には注視する必要があります。

少子高齢化・核家族化の進行とニーズの変化

日本は人口減少とともに少子高齢化・核家族化が進行しています。以前は就職や結婚しても、親と同居する方は少なくありませんでしたが、いまは結婚したら男性も女性も家を出ることが多くなりました。
 
就職とともに親元を離れる方も少なくありません。結果として、大きな家よりも小さな家、ワンルームから1DK、1LDK、2DKくらいの間取りの需要が増え、3LDK以上の間取りの部屋の需要は少なくなっている傾向にあると感じます。
 
また以前は、学生や新社会人には風呂トイレは居住者で共同利用、というアパートも相当数の需要がありました。現在では、各戸に風呂トイレがあるのは当たり前になっています。
 
一時期話題になった「シェアハウス」は、イメージは異なるものの昔のアパートと同じような思想のもとに作られた仕組みだともいえます。しかし、プライバシーを重んじる風潮が高まっている昨今では、何か特徴が打ち出せないと需要を維持するのは難しいでしょう。
 
時代の変遷で不動産に求められるニーズも変化していく中、不動産投資は長期にわたる投資になるため、将来を見通すことも重要になります。

災害に耐えられるか

近年、地球温暖化の影響からか台風などによる暴風、大雨とそれに伴う洪水、高潮など大きな自然災害が立て続けに発生しています。また、地震列島である日本では、どこにいても地震に見舞われるリスクは避けらないといえるでしょう。
 
しかし、そうしたリスクは高いところと低いところがあります。ほとんどの自治体が作成している「ハザードマップ」は必ず確認しましょう。水害のリスクが高いところや、木造住宅が密集し火災のリスクが高いところなどは避けるべきです。
 
地震に対しても地盤が弱く揺れやすいところなどを把握できます。例えば、東京都都市整備局では「地震に関する地域危険度測定調査」の結果を公表しています。
 


(出典 東京都都市整備局HP 地震に関する地域危険度測定調査)
 
損害保険会社の地震保険は、以前からリスクの高いエリアほど保険料も高く設定されています。最近は、大きな気象災害が増えていることもあり、火災保険も浸水リスクの高いところと低いところで保険料に差をつけることになりました。
 
保険料も、不動産事業を運営する上で必要になるコストです。しかし、万が一被災してしまった場合はコスト以上に損失が大きくなるため、事前のチェックは欠かせません。

まとめ

不動産には「動かせない」「流動性が低い」という特性があります。ただし、状況に応じて保有資産を組み替えるということは可能です。不動産から金融資産に変えることもあるでしょうし、保有している物件をほかの物件に買い替えるという選択肢もあります。
 
しかしながら、不動産は売買時にもコストや時間がかかるほか、もし売却時にローンの残債が物件価格より多く残っていると、追加で資金を出さなければ売却できません。時間や手間、費用がかかることから、必要性は感じていてもなかなか組み替えに着手できない人も少なくありません。
 
不動産投資の対象としての物件選定の際は、長期間にわたる将来性、安全性も検証し、慎重に行う必要があります。
次回は、入居者の目線で見る物件選びについて考えます。
 
(参考)
東京都都市整備局 地震に関する地域危険度測定調査
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

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