更新日: 2020.09.07 その他資産運用

本当にデメリットだらけ?「毎月分配型投資信託」も考え方や使い方次第?

本当にデメリットだらけ?「毎月分配型投資信託」も考え方や使い方次第?
少子高齢化の進展で、現行の社会保障制度全般に対する将来不安は高まる一方。
 
そんな状況の中、公的年金制度以外にも老後資金を自助努力によって並行して準備しておこうとする動きも活発化しているようです。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

長期にわたる財産形成をサポートする制度

長期にわたる財産形成をサポートしようという公的な制度も、整備されるようになっています。次のような投資制度がその代表格でしょう。
 


 

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「毎月分配型投資信託」の問題点とは?

上記の「対象の運用商品」にはいずれも投資信託が含まれていますが、これらの制度において、日常よく見聞きする「毎月分配型投資信託」に対する風当たりは大変強いようです。
 
その理由としては、
(1)毎月分配することで投資の複利効果が得にくい

(2)収益を分配する場合に都度税金がかかる

(3)収益が分配金を下回ると元本の取り崩しをするので〝タコ足〟的に資産価値を侵食していることになる 

などがあげられています。
 
そのため毎月分配型投資信託は、つみたてNISAでは一切対象外であり、  iDeCoを取り扱う各社の商品ラインアップにおいてもその姿はほぼ見られません。長期的な資産形成には不向きであると判定されているわけですね。
 

年齢やライフステージによって、資産運用のスタンスはさまざま

しかし、そもそも投資信託は長期的な財産形成だけを目指したものなのでしょうか。資産運用の方法論は年齢やライフステージによって異なりますが、よくいわれるのはざっと次のようなところです。
 
<若い世代>
将来に備えた資産作りが大切な時期。時間を味方にして長期的な運用もできるので、ある程度リスクがあっても積極的に値上がり益を狙うことも可能
 
<働き盛りの世代>
子育てや住宅ローンなど支出が多い時期。子供の将来や自身の老後も見据えた準備も必要。安全性に軸足を移しながら着実な資産形成を目指したい。
 
<セカンドライフに向けた世代>
貯蓄や年金収入をベースに、セカンドライフに向けて資産を安全に管理しつつ運用する工夫が大切な時期。ゆとりある暮らしのための趣味・レジャー費などを(定常的収入以外の)資産運用収入でまかなうやり方もあり得る。
 
年齢やライフステージのほかに各人の価値観もさまざまですから、資産運用に関しての正解がひとつだけということは決してないでしょう。
 

「毎月分配型投資信託」を選ぶ理由は?

デメリットも多そうな毎月分配型投資信託をあえて選ぶ理由として、【毎月決まったお金を定期的に入金してくれるから】をあげる人は少なくないでしょう。
 
先ほどのライフステージの<セカンドライフに向けた世代>あるいは既にセカンドライフに入った世代からは、特にそのような声が多いように思います。
 
運用することよりも使うことに主眼をおいているお金であれば、実際には元本の取り崩しになっている局面もあったとしても、毎月お金が入ってきて例えばそれを趣味やレジャーなど通常の生活費以外の「ゆとり」部分などに充てられるのは、経済合理性を超えてうれしい感覚なのかもしれません。
 
さらに(長期的にとまでは申しませんが)中期的に見てある程度の運用益が期待できるのであれば、ほぼ金利の付かない銀行預金から毎月毎月お金を引き出すことに比べても一定の合理性があることになりますね。
 

こんな試算もあります

ある有名な毎月分配型投資信託(ワールドリート商品)について、今年5月を基点に購入時期が数年間さかのぼった時点だった場合の損益をざっと試算してみました。
 
ここ数年来で見ると基準価額や分配金がピーク時には[基準価額4500円位・毎月分配金60円(いずれも一万口当たり)]だったのものが、今年5月末には[基準価額2200円位・毎月分配金25円(いずれも一万口当たり)]と大幅下落し、純資産総額も全盛期の1兆3千億円超から基準価額の低迷と相次ぐ資金流出で今では六千億円を切る凋落ぶりですが、いずれかの時期に100万円分を購入(購入手数料はナシと想定)した場合の結果は次のとおりでした。
 


 
お金は、貯めておくだけでは利用できません。使ってこそ活きるものです。上記の試算でも、保有・運用期間が2年間や3年間では運用しているつもりが実は銀行預金を取り崩す方がマシだったという悲しい結果となっています。
 
しかし、同4年間や5年間ではある程度のパフォーマンスです。
 
毎月分配型投資信託は、ある比較サイトで検索してみると850を超える本数が表示されます。
 
信託報酬や分配金余力の多寡、純資産総額規模、(海外型の場合の)為替ヘッジの有無等々選定のための要チェックポイントも多いでしょうが【毎月決まったお金を手間なしに定期的に取り崩して、ゆとりある生活等のために使う】といった割り切りをすることも良いかと思います。
 
そして、分散投資対象のうちのあくまでもひとつにすぎないと位置付けるのであれば、毎月分配型投資信託もそれなりに有用なのではないでしょうか。
 
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士,不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー


 

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