更新日: 2024.01.23 株・株式・FX投資
FXについて その3 FXの税制はどうなっているの?
株式の売買で得た利益は「譲渡所得」となるのに対して、FXの為替差益やスワップポイントは「雑所得」のうちの「先物取引に係る雑所得等」と分類されています。
暗号資産(仮想通貨)に関する利益も雑所得に分類されますが、こちらは総合課税であるのに対し、FXの場合は申告分離課税で、株式の譲渡や暗号資産の売買とも違った税制が適用されることになります。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
FX取引に関する税制
FX取引による利益は、先物取引に係る雑所得等となり、雑所得のなかで特例的に「申告分離課税」となります。申告分離課税とは、給与所得など他の所得と区別して課税される方式をいい、20.315%(所得税15%、地方税5%、復興特別所得税0.315%)の税金がかかります。
申告分離課税であること、および税率に関しては株式の譲渡益と同様で、FX取引に関する利益は確定申告が必要です。
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FX税制に関する特徴と注意点
FX取引で適用される税制の特徴として、以下が挙げられます。
必要経費の計上が認められる
雑所得では必要経費が認められるため、FX取引で得た利益にも必要経費の計上が認められることがあります。
例えば、FX取引で利益を得るための勉強代(書籍の購入代、セミナーの受講料)や、取引に使用しているパソコンなどの費用が必要経費に含まれる可能性があるので、詳細について所轄の税務署に問い合わせて確認することをお勧めします。
また、必要経費となりそうな費用に関する領収証は保存しておきましょう。FX取引による所得は、次のように求められます。
当該年(1月1日から12月31日)におけるFX取引の利益(為替差益+スワップポイントによる利益)-必要経費
当該年に課税対象となる取引
未決済建玉については、1月1日から12月31日までに決済して、受け渡しが完了したものが課税対象となります。受け渡しが完了していない未決済建玉の評価益・スワップポイントは、翌年以降、決済した年に課税対象となります。
損益通算
損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することです。対象となる所得の範囲が限定されるなど、実際の利用は複雑です。損益通算が可能な場合、あるFX会社における取引での損失を、他のFX会社での利益から差し引くことができます。損益通算を行うには確定申告が必要です。
損益通算が行える範囲は、差金決済による差損が生じた場合で、かつ、それが一定の先物オプション取引による所得の金額など、他の「先物取引に係る雑所得等」に属するケースに限られ、それ以外の所得との通算はできません。
したがって、株式等の譲渡損益や仮想通貨の取引のほか、海外FX業者の口座での損益との損益通算はできません。
損失の繰越控除
損失の繰越控除が可能で、翌年以降3年間にわたり繰り越して損益通算することができます。繰越控除を行うには、毎年の確定申告が必要です。繰越控除は最も古い年分から順次差し引く形で行います。
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FXと株式、仮想通貨での課税関係の比較
FX、株式、仮想通貨の取引における、課税関係を比較したのが図表1です。一覧にすると、それぞれの違いがよく分かると思います。
図表1
FX、株式等、仮想通貨に関する税制比較
FX取引 | 株式等の取引 | 仮想通貨の取引 | |
---|---|---|---|
所得区分 | 雑所得の先物取引に係る 雑所得等 |
譲渡所得 | 雑所得 |
税金と税率 | 所得の20.315% (所得税:15%、地方税:5%、復興特別所得税:0.315%) |
所得の20.315% (所得税:15%、地方税:5%、復興特別所得税:0.315%) |
所得税:5~45% (累進課税)、住民税:10%、特別復興所得税:基準所得税額の2.1% |
課税方式 | 申告分離課税 | 申告分離課税 | 総合課税 |
経費計上 | 可能。手数料など取得・譲渡に要した費用(※)に加え、投資の知識を得るための書籍代、セミナーの受講料などが経費として認められる。 | 可能。手数料など取得・譲渡に要した費用(※)は認められるが、投資の知識を得るための書籍代、セミナーの受講料などは経費として認められない。 | 可能。手数料など取得・譲渡に要した費用(※)に加え、投資の知識を得るための書籍代、セミナーの受講料などが経費として認められる。 |
損益通算 | 一定の先物・オプション取引による事業所得の金額、譲渡所得の金額および雑所得の合計額など、他の「先物取引に係る雑所得等」に属する所得との損益通算は可能。 | 上場株式内、一般株式内では可能(上場株式内では、それらに関する配当所得・利子所得との損益通算も可能)。 上場株式と一般株式・NISAの間では不可。 |
仮想通貨同士では可能。 他の雑所得、および他の所得とは不可。 |
繰越控除 | 損失を繰越控除でき、翌年以降3年間にわたって繰り越して損益通算が可能。 | 翌年から3年間可能。 | 不可。 |
筆者作成
(※)1. 株式等の譲渡のために要した委託手数料など。2. 譲渡した株式等の取得のための借入金等の利子(当年中の保有期間に対する金額部分)。3. 株式売買等を内容とする投資一任契約に基づいて支払う固定報酬および成功報酬。
まとめ
「その1」から「その3」までの3回にわたり、FXの特徴や税制について説明してきましたが、FX取引は一部の投資の専門家だけでなく、一般の人にも広がっています。
投資初心者の方がFX取引を行う際には、高いレバレッジを効かせたハイリスク・ハイリターンの投資であるという特性を十分に理解し、一定の限度を決めて取り組むことが必要でしょう。
出典
国税庁 No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例
国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
国税庁 No.1500 雑所得
国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
国税庁 No.2250 損益通算
国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー